نخستین 200 خط.
〈私はめぐる。 吉田めぐる。 進学塾の講師でがす〉
〈今 わざと訛ったわけでは ありません〉
〈ルームメイトのみちるちゃんが すごく訛っているんです〉
私 買い物さ 行きますけど
晩飯 何が食いでえ?
食いでえ物なんてねえ!
〈ちなみにめぐるは 大層 落ち込んでいます〉
〈めぐるが立ち直るまで
先週の話を思い出してください。
〈複雑な家庭環境のせいで 子供と向き合えない
みちるちゃん。 だけど…〉
見えるの! あなたの未来が。 いいお母さんになるんです!
あれ…? 子供たちがいない。 どういう事!?
〈そうなんです。 私の不用意な一言が
2人の未来を 変えてしまったんです〉
めぐる どうしたんすか?
何でもない。
何でもねえ事ねえっす。 何でもない人は
「何でもない」なんて 言わねえっす。
言うでしょ 何でもなかったら。
そうかなぁ。
じゃあ 私そろそろ。 ご馳走様でした。
あ 待って。 送っでく。
ユーキ君も そろそろ帰ったら?
ほら やっぱり何でもない事ない! おかしいっす。
めぐる 最近おかしいっす。 離して!
ごめん! …なさい。
めぐる 他に好きな人でも 出来たっすか?
何言ってんの? そんなんじゃない。
じゃあ 好きって 言ってほしいっす。
えっ!? ちょっと待って おじいちゃんの前だよ?
言いなさい めぐる。 えっ!?
ホントに好きなら言えるはずっす。 言ってほしいっす。
さあ めぐる。 めぐる!
ユーキ君…。
私ね 人の未来が見えるの。
あっ… バカ お前! だって言いなさいって言ったから。
そっちじゃない。 それ言っちゃ ダメだ。
好きな人には 隠し事したくないの!
やべっ! 超うれしいっす!!
ユーキ君…。
自分も めぐるが好きっす!
待って。 話 ちゃんと聞いてた?
聞いてたんすけど 好きって言われて
脳が初期化されちゃったっつーか 好きで頭いっぱいっす!
あぁ… バカでよかった。 バカ?
ちゃんと聞いて。 私には ユーキ君の未来が…。
あー! あーわーわーわー…。
20年後の姿が見えるの!
めぐる それ笑えねーっす。
笑ってほしいわけじゃないの。 見えるの。
またまた~。 もう ホントなの!
あの 今聞いた話は 絶対に口外しないように。 な?
それって… 美輪的な? 江原的なアレっすか?
オーラは見えない。 前世もわからない。
霊媒師的な? 陰陽師的な?
シックス・センス的な?
どんどん ズレてってるよ。
ごめん 無理! 自分 ギブっす。
容量オーバー ボム! シュ~ッ!
諦めないで! ユーキ君!
ちょっと ユーキ君!
〈こうして私は 毎晩 こたつに引きこもり
1週間が経とうとしています〉
〈暑い… 出たい… お腹空いた~!〉
〈でも 自分の能力に 怯えて暮らすよりは…〉
はい!
食ったら器は 外に出してけろ!
いらねえったら いらねえ!
あっ こたつだ。 こたつ?
吉田先生のほら ほっぺに模様ついてるでしょ
バーバリーみたいな。 あれ こたつですよ こたつ焼け。
こたつで日焼け するわけないだろ。
するよ 赤外線ですから。
試したんですか? 試したねえ 好奇心旺盛だもん。
カレーに胃薬入れたり カレーにメントス入れたり…。
カレーばっかりじゃ ないですか。
それ… ラブホテル特集じゃないか!
すごくない? 部屋の中さ 船が浮いてんだと!
ぱねー すごくない!
断片的に 東京に染まってる…。
《楽しそう あの2人》
《私の一言がなければ
結婚して 幸せな家庭を 築くはずだったのに…》
はい 授業! はーい 授業。 行ってください 授業でーす!
吉田先生 パンチラ! えっ!?
じゃない ばってら。
しょうがないか 似てるからね。
カレーに入れたら どうなるかな?
「go-to-hell.hell666hell 耳 耳…」
耳じゃない @。
おい すごいアドレスだな。 誰からだ?
20年後のみちるちゃん。 お前なあ…。
メールはいいって言ったじゃん!
で 何…。
「ボランティアの仕事で パキスタンにいます」
「学校へ行けない子供たちに 読み書きを教えたり…」
私のシャンプー使ったの 誰だ!?
おめえか? おめえか! あぁ… はい!
やめろ! トイレの便座 上がったまんまだし
歯磨き粉のフタ 戻さねえし! 全部 私がやってんだぞ?
ボランティアでねえぞ!
地獄さ落ちろ!
いやぁ 変われば 変わるもんだな おい。
そんな事より その後。
「自分の子供は まだ先になりそうです」って。
私があんな事 言ったからかな。
普通に結婚して 子供産む人生なんか
つまんないって 思っちゃったのかな。
そりゃ考えすぎだよ。 いや 絶対そうだ。 撤回してくる。
おいおい ちょっと待て。 お前 何か誤解してるぞ。
いいか 高尾山先生と 結婚しないとしたら
それも 自分の意志。 あの子の決断だ。
この先 いろんな人に いろんな事を言われるんだ。
お前ひとりのせいじゃ ないんだよ。
そうかなぁ。
だって そう思わなきゃ お前 対人恐怖症になっちまうぞ。
もうなりかけてるよ。 あと拒食症。
なんだ 高尾山先生か。
「なんだ」って… まさかお前 ユーキ君にも?
送ったよ。 耳20個つけて。
お前は もう…!
だって 付き合ってるんだよ。 当然 気になるじゃん。
それより 見て。
「この度 盆栽コンクール 仙台大会で 見事 入選致しました」
「私のような 独り身の 寂しい老人と致しましては
これをバネにして…」
どうなんですか?
どうって… 木村先生と 今のところ いい関係で…。
いいとか悪いとか 聞いてない! 肉体関係の話です!
それ 先週僕が言ったら 「死ね」って言いましたよね?
まだなんですか? いつ なんですか? いつでもどうぞ!
ラブホの割引券! もう時間がないんです。
盆栽 バネにしてる場合じゃ ないんです。
これ ここ置いときますから 遠慮なく!
落ち着いてください。 彼女とは 仮にも
元教え子と教師ですよ。 全然 恋愛対象じゃない。
あんな いい子 そうそういないですよ!
かわいくて料理も出来て 結婚するなら…。
こう見えて 年上じゃなきゃ ダメなんです!
はっ!? 甘えたいんです。 甘え体質なんです。
理想のタイプ 五月みどりなんです。
年上って…。 40ですけど 何か!
ほら~ こういう空気になるから。
ついでに報告しますけど 僕 お見合いしますんで。
えっ!?
勘違いしないでください。 自分の意志ですよ。
まあ この年だし 相手 年上だし。
よっぽどの事がなければ 結婚します!
よっぽどの事あります!
そんな… お見合い相手に よっぽどの事ある~!
はい。 ではね 取り急ぎ これは僕がいただきます。
アイターッ! 地獄に落ちればいい。
地獄限定ですか? こんな顔だよ。
あっ! 野球選手だけじゃ ないんすか!
ねえ 探せば出てくるもんだね。
おはようございます。 おはよう。
聞いて みちるちゃん。 高尾山先生が…。
何だべ?
愛されメイクだ。 しかも メガネがない!
アーバン計画が 着々と進んでるね!
まるで豊洲だ!
さっき 駅前でスカウトされた!
スカウト? んだ。
軽く お小遣い稼ぐつもりで
女優をやってみないかって 言われだ!
それ AV。 絶対 エロビデオ! ねえ。 エロビデオです。
あ~ もう 2人とも イライラする!
付き合っちゃえばいいのに! 付き合っちゃえばいいのにさあ!
《気になる…。 この間は めぐるのかわいさに
頭 バグってしまった僕だけど 言われてみれば気になる
めぐるの不可解な言動の数々…》
《あれは めぐるの誕生日…》
あれ…? どうかしました?
…いえ。
デザート 超うめーっす。 ぱねーうめえっす。
《あの時は 僕のイケメンぶりに 改めて惚れ惚れしているのかとエロビデオです。
タカをくくっていたけれど》
もし 20年後の姿が 見えていたとしたら…。
そういえば あの後…!
ユーキ君! もう どこ行ってたの! えっ?
トイレから戻ったら 変なおじさんが座ってて
太って ハゲて ニヤニヤした。
それが僕…!?
そんなバカな! しかも あ… あ…。
声にするのも おぞましい!
《落ち着け ユーキ! 僕に限って》
《京王稲田堤のリバー・フェニックスと 謳われた この僕が》
《いや… 元はといえば 太りやすい体質》
《中学時代のあだ名は 樽》
《そのうえ 親父も兄貴も じいちゃんも 代々…》
毛が薄い! 親父も兄貴も じいちゃんも 代々…》
あ いらっしゃいませ。 ご注文は?
えいっ。 どわっ!
それっ!
つぶれちゃえばいいよ こんな店。
おい! ちょっ ちょっ…。
バーカ!
…あ!
「ギリギリじいさん! 僕の話を聞いてください」
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