نخستین 200 خط.
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《「高校時代に得た友は 生涯の友となる」・
と言ったのは 高校の入学式で 長々と演説した校長先生だった》
《白山の山奥の中学から 仲間もなしで・
金沢の高校に出てきた私には 猛烈に身にしみた》
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《しかし 今 私は断言する》
《あんなのが私の生涯の友じゃ 私の人生は真っ暗よ》
そう憤んなくてもさ
あれだけ お美しければ 浮世離れもなさるのよ
そりゃね 私だって あの子が クラス紹介のときに・
「江波緑子です」と 名乗ったときには・
その緑子という名前の 非日常的な麗しさと・
彼女の美しさには いたーく感動したわよ
でもね 何よ 緑子と徹夜で・
人生論なんか語り明かしたかった とでも言うわけ?
そんな気恥ずかしいこと のたまう気はないわよ
もっとね 深い絶望なの
女の一生を根底から覆すようなね
緑子様は 自らの死の間際にあって なお・
人の世の酷薄さを憂い なお愛し
思えば かの方の世離れした 才 美は・
誠に 誠に 夭折者としての宿命と共に・
神より与えおかれたもので ありました
今はただ かの方の生きられた・
17年に及ばんとする・
輝かしくも清冽であった 日々を思い・
共に祈りを ささげようではありませんか
国語の苦手なあんたにしては 上出来な挨拶よね フフッ
覚えるだけでも 大変だったでしょ?
何 徹夜したの? 何よ その態度
人の厳粛なお葬式だっていうのに
今日の11時から 辰雄さんの結婚式なの
辰雄さん?
何 あの教育実習生の君?
驚いた あの片恋 本物だったわけ?
失礼ね 相愛よ
短くも 美しい恋に燃えた 思い出を抱いて 緑子は死ぬの
情けないの わたくし
失恋っていうのは そういうもんよ
一般論じゃないの
辰雄さんはね 「今一番キラキラ輝いてるのは・
君たち少女だけだ」なんて 言っときながら・
赴任先の中学の女年増教師に イカレちゃったんだから
思い上がって淫行に走る先生よか ノーマルなんじゃありませんか
あんたたちって ホントに 友情の薄い友達なんだから
友情の薄い友達が 2回も死んだ 人間の葬式に つきあいますか?
うん?
《最初の死亡通知をもらったのは 去年の今頃》
《体育の授業中 みんなが見守る中・
平均台で 調子に乗って 脚を開いた途端に・
思いきりショートパンツが 破れてしまって》
《2度目は 去年の期末試験の ヤマが大幅に外れて・
5教科赤点という 大惨事を引き起こし・
校長の名前で 両親へ 「このままでは落第もありうる」・
と脅しの通知が届いた日》
ショートパンツ 成績
まあ 悩みの対象に対する 人間的成長は評価できるわね
死ぬまでに 一体 この白い十字架 いくつ建てたら気が済むのかな?
人が 平凡な夫と平凡な子を持つ 平凡な主婦になっても・
あの黒い縁取りの案内状が 届くのかと思うと
黙って聞いてりゃ 何よ あんたたち
私だってね あんたたちが よよと慰め・
しっかと励ましてくれるような 友達じゃないことぐらい・
分かってるわよ でも…
でも デリカシーの「で」の字ぐらい 持っててくれたっていいじゃない
打ちひしがれておられる
あんたらが失恋した日には 私 両手に日の丸の旗持って・
フレンチカンカン 倒れるまで踊ってやる
あら もうゆうべ 倒れるまで 踊ったんじゃないの?
何よ
あんたって ホント やな性格してんのね
ちょっと 2人とも いいかげんにしなさいよ!
今日は お多佳さん 虫の居所 悪そうだし・
帰りましょう ねっ 帰りましょう
いいの? お母さんに怒られない? うん
店が開くの 7時すぎだしさ
あーっ
ハァ
私さ 緑子みたいに・
自分が本気で ほれたって男のことさ・
ああ簡単に 口に出されると なんか信用できないんだよね
なんか許せないんだよね
もし本気で 人のこと・
あ… 愛してしまったらさ・
そうおいそれとは 口に出せないと思うんだけどな
ウフッ お多佳さんらしいね そういうの
ほれた男がいるってだけでさ・
こう 一生の不覚みたいなとこが あるのに・
それを わざわざ人に宣伝する必要 ありゃしないってわけか
・(ラッパの音)
ねえ お多佳 うん?
あんたさ ほれた男いる?
あんたって急に そういうこと聞くのね
アハッ 急じゃないわよ
今日のお多佳さんの発言と 行動を分析すると・
自然に そういう質問になるのよね
私 いるわよ
へえ んっ 何が?
ほれてる男
えっ えっ… いるの? ほれてる男
どもるんじゃないわよ あっ
あんたにいたの? そういうの
だけど なんで あんた急に そんなこと言いだすのよ
だってさ お多佳だけが・
「恋愛に我関せず」って 顔してるんだもの
《何が 「恋愛には我関せず」って顔よ》
《やい 汀子 緑子》
《あんたらには人を愛する ってことが分かってんの?》
《人は みんな 自分のルールで 生きてるんだ》
《同じように愛する相手にだって 自分のルールがあるんだ》
《だから… だから 人を愛するってことは・
初めて自分のルールが・
他人様のルールと ぶち当たることなんだ》
《それは自分の これまでの・
経験や考え方 感じ方 生き方では 通用しないってことなんだぞ》
《ちっとは恐ろしいことだと 思わないの?》
《好きな人がいるのだの できただのと・
うれしそうに ペラペラ しゃべってていいのか?》
どうぞ5階席での観覧は・
お早めにご入場くださいませ まもなく あと10分ほどで・
全退場終了 休憩時間に入ります
くっ…
フフッ
お前 こういう映画 見るんか?
こういう映画って?
「輝きどきに出会った男と女に 愛のルールはいらない」
高校生が見ちゃいけないって どっこにも書いてないもん
葬式の帰りに見る 映画でもねえやな
結婚式の帰りなの!
そっちこそ何よ 高校生にもなって・
『ナイン』とか『タッチ』とか 漫画 見てんじゃないのよ
2分の1 足りないの
野球部だもん バーカ
私 急いでんの じゃあね
《なんで こんな所で あいつと》
《最悪な日だ》
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ああっ ああ!
あっ! ああっ!
《沓掛 勝》
あいやー! 《なんてことない男なのにな》
《どうして こう ついつい 目がいっちゃうのか》
《向こうは てんで私などには 気づいてないし 自然そのものだ》
《結局 私の目が 知らず知らずのうちに・
あいつを 捉えているんではないか》
《どうやら それは 認めなくてはいけないようだ》
《でも 見つめることが どうなんだと言われれば・
とりあえずパス》
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《私の実家は 白山の麓にある 温泉旅館なんだけれども・
父というのが県会議員を目指す 自称 地元の名士で・
石川県の 旅館協会の会長をしていて・
いつも あちこち飛び回ってて・
ほとんど本業の旅館経営は ほったらかし》
《でもまあ そのおかげで 姉と2人・
タダ同然で この2階に 下宿できたのだ》
《姉の比呂子は現在 金沢教育大学の4年で・
もうすぐ就職なんだけれど 両親のたっての願いで・
実家の旅館の女主人のポストが 内定している》
《他に 大学で何やってんのか 何を考えてるのか・
てんで分からない人である》
私さ 最近やったら誰かに 見られてる気がするんだよね
もしかしたら ひそかに ほれられてんじゃないかな?
思春期から青年期へ 移行していく過程で・
他者のまなざしを極度に過敏に 意識しすぎる人たちが出現する
とりわけ不安と 精神的緊張が高ぶるにつれ・
対人関係から できるだけ 身を引こうとする行動が生じる
こういう人を 対人恐怖症者と呼びます
できたわよ んっ
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「『子供ってものは かりに金色の輪なら・
輪を掴もうとしたときには・
それをやらせておくより 仕方なくて・
なんにも言っちゃいけないんだ』」
「『落ちるおきには落ちるんだけど なんか言っちゃいけないんだよ』」
「回転がとまると 彼女は木馬をおりて・
僕のとこへやって来た」
「『僕はただ 君を見ててあげるよ 僕は見てるだけでいいんだ』」
「僕はそう言って 彼女の金の中から・
またいくらか出して 渡してやった」
「『はい もう少し切符を買っといで』」
「彼女は その金を受け取ると・
『あたし もう兄さんのこと おこってないのよ』と言った」
「『わかってる さあ急いで また動きだすよ』」
「そのとき彼女は いきなり…」
絹子! あんただったの?
何 いつから のぞき女になったのよ?
あら 授業やってるときに こんな所で・
乙女の本を読む声が聞こえればね 誰だって のぞくわよ
授業やってるときに こんな所に 他の人がいるとは・
思わなかったわよ あら 私 去年からいたじゃない
フフフフッ 相変わらずね
授業休んで 絵ばっかり描いてると また今年も留年するよ
あんたに 私の将来を心配して もらおうとは別に思ってないわよ
はい あっ ありがと
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