The first 200 lines.
がまは四面に立てかけた 鏡に映る己が姿を驚いてか➡
全身は油と汗を とろりとろりと打ち流すのじゃ
その油を かねて用意の鍋にと 打ち取り➡
百と八つの薬草を 笹の葉っぱと打ち混ぜて➡
とろりとろり とろ火にかけたのが この油じゃ
やあ 先生 ご苦労さまでございます
- (金子)どうだ 売れたか? - やあ まあ ヘッヘ...
子供は 子供はあっち 子供はあっち...
≪ おい どうだ
あっ これは先生 ご苦労さまでございます
- うん 商売になるか? - 寒いので ちっとも人が出ません
- そうか まあ 精出してやれ - はい どうも ご苦労さんで
さあ いいか 次は この長いのを抜いてみせるからな
おい
先生 今夜は このとおりの寒さなんで➡
全然 人が集まらねえんで 勘弁しておくんなせえや
バカ野郎 そんなこと 親方に知れてみろ
だって こんなに たくさんの店ですもの
1件や2件 少なかろうが 分かるもんですかい
親方は細かいから いちいち勘定するんだ
固いことを言いなさんな どっちみち お前さんの懐へは➡
- びた一文 入るわけじゃなし... - いや ダメダメ はい ダメ
やあ お浪さん こんばんは
どうです 今日は売れましたか?
ええ...
寒いから 人手が少なかったでしょう
ええ ちっとも
いや いいんですよ いいんですよ なあに 払わなくたってよろしい
こんなに店は多いんだから➡
1件や2件 少なくたって 分かるもんですか
でも いつもいつも ご迷惑ばかりおかけして
ううん 何が迷惑なもんですか
ああ どっちみち わしの懐に びた一文だって入るわけじゃなし
おお 金子さんじゃありませんか
よう ああ 北村さんですか
- どうも とんだ所で出会いましたな - いやあ お達者で結構
- 江戸詰めですか - 先月 国表より参っての
おお そうですか では あまり遅くならないうちに➡
回ってくるかな じゃあ お浪さん おやすみ
おお これ 金子さんよ
あんたとわしの仲で そう つれなくしなくても うん?
んー... 久しぶりに会ったんではないか
どっかで ひとつ ゆっくり飲みながら話そう
- やあ ちょっと今日は忙しいから... - (北村)おお これ 金子さん
ああ... 金子さんよ
金子さん あんた 浪人したからって➡
そう ひがんでくれちゃ困るね ええ?
いやあ ホントに久しぶりだったね あー どうしていましたね?
我々は 寄ると触ると あんたのウワサが出るよ
どうしているだろうと
いやあ ただ なんとなく 生きていますから ご安心ください
- では 御免 - ああ 金子さんよ 金子さん
金子さんよ
姉さん
広ちゃん こんなに遅くなるまで どこ行ってきたの?
姉さん 姉さんの その なんかって➡
「広ちゃん 広ちゃん」って言うの やめてもらいたいな
なぜ? 広ちゃんって言っちゃ悪い?
おら いつまでも子供じゃないよ
そう? ウフフッ...
広太郎 もう遅いじゃないの 早くお帰りよ
いやあ 変わったヤツじゃ
昔は あんなヤツじゃなかったんだが➡
浪人をすると ああも変わってくるかな
- 姉さん おら 今夜も帰らねえぜ - あっ 広ちゃん どこ行くの?
姐さん いくらかな?
ありがとうございます
あっ 小柄が無い
どうかなさいましたか?
うむ... 小柄が無い これは大変だ
小柄が無いよ
いけねえ また旦那の勝ちだ
- ああ 旦那には かなわねえ - 旦那の将棋は まるで玄人だ
これで 3べん 立て続けですぜ
さあ 今度は負けませんぞ
ねえ 旦那 いつまでも 10文 20文の勝負じゃ➡
面白くねえじゃありませんか
今度は 大きく張っておくんなさい 用意の金は50両
10両までの勝負なら いくらでも引き受けますぜ
さあ 旦那 張っておくんなさい
- (河内山)では1両 張りましょう - (丑松)1両
さあ お張んなさい
旦那が勝ちゃ 5両にして お返し申しますよ
- およしなさい - (丑松)やい 広公
うるせえ 黙ってろい!
ぐずぐず言うヤツは とっとと行っちまえ!
旦那 どうか やっておくんなさい
- あっ そうか - 旦那 惜しいことをしましたね
じゃ 1両 頂戴します
どうです? 今度は この敵討ちに 2両とお張んなせえ
およしなせえったら... 分からねえかなあ
- (子分)おい - (広太郎)うん?
なんだい
おい 広公
さあ 旦那 あんな若造の 言うことなんざ 気にしねえで➡
どうです? 今度は 2両とお張りになったら
いや ひとつ 今度は 10両と張りましょう
- 10両? - はい 10両
その代わり 私が勝てば 50両でございますな?
そうでござんす
10両 張って 旦那がお勝ちになりゃ➡
50両にしてお返ししましょう
- じゃ 10両お張んなさいますね? - ええ
ヘッヘッヘッヘ...
やいやい 見たか こんちくしょう 江戸っ子は この意気だ
一夜千両 宵越しの銭は使わねえって➡
その意気だ
てめえたち この旦那の爪の垢でも 煎じて飲んで...
あっ...
じゃあ もう一度 念を押すが 俺が勝ちゃ この10両の金は➡
50両んなって 返ってくるんだったな?
へえ
じゃあ 兄さん いいから やってくれ
そんなわけで まんまと そいつの イカサマに引っかかりまして
イカサマ師がイカサマに 引っかかってりゃ 世話ねえや
すいません
親分からお借りしました50両と あっしのヘソクリ2両ばかり...
バカ野郎! 裏へ行って 井戸の水でも かぶってきやがれ
ふざけやがって
おう 先生 ご苦労だった
おや? 1軒 足りねえ
先生 今夜は 43軒じゃなかったんですかい?
ああ いや 42軒
いや 確かに42軒 間違いありません
どうしたい 娘さん
ははあ 男が2階へ 来てるってわけだね
呼んでやろうか なんて男だい?
あの 広ちゃん来てませんか?
- 広ちゃんって誰だい? - 広太郎っていいますの
広太郎? 聞いたことのねえ野郎だが
いつも ここへ来てるんですけれど
よし 聞いてやろう 待ってなよ
- ≪(お静)だあれ? - 俺だい
≪(お静)あら あんた おかえり
- あの... - んっ?
おりましたら 姉が迎えに来てるから➡
すぐに帰るように おっしゃっていただけませんか?
なんだ おめえの弟か そうかい
どうしたの?
2階 やってるんだろ?
ああ 今夜は夜通しやるんだって
- 広ちゃんって人 来ていないか? - (お静)広ちゃんって 誰のこと?
あの子の弟だって 迎えに来てるんだよ
ああそう 勝手に 2階へ上がって聞いてごらんよ
ああ いいよ 俺 行って聞いてきてやる
- おう 広ちゃんっているかい? - 姉さんが迎えに来てるぜ
- (男性)広ちゃんって 誰だ - (広太郎)あっ ここへは➡
広公 来ておりませんよ
そうか じゃあ そう言ってやる
今夜は まだ来ていねえそうだよ 虎公ん所じゃねえか?
- あの... - 小間物屋の虎公よ 知らねえのか
この近所で ほかにまだ こんなとこがございますの?
ああ あるとも 教えてやろうか
- あっ 健さん 今の人 誰だい? - (健太)えっ?
なんでい 知らねえのか?
- 下の姐さんの「レコ」だよ - (広太郎)じゃあ おめえ...
あれが 河内山宗俊っていうんだ
斎藤の中間部屋と その小間物屋の裏と➡
この近所の賭場っていや まあ そのくれえなもんだよ
ご親切にありがとうございます
- 行く道は分かってるね? - ええ よく存じております
- (お静)かわいい娘ね - えっ?
- (お静)あら もう帰んの? - (広太郎)いえ
親方 先ほどは失礼いたしやした
おお さっき親切に教えて くれたのは おめえさんだったね
お名前は かねがね 承っておりましたが➡
お顔を知らねえもんですから 恥かきました
何 恥なもんか 俺は おめえに➡
- 礼が言いてえくれえだ - ご冗談を
- まあ 上がれよ - (お静)お上がんなさいよ
- なんていうんだい おめえ - あっ 失礼いたしやした
あっしは広太... いえ 直次郎と申します
お見知りおきを願います
ああ... さあ 直さん
- 近づきの印に一杯どうだい - あんた ダメよ
若い人に そんな大きいので 飲ましちゃ かわいそうよ
- ああ 一杯ぐらい いいや - ダメよ ねえ?
まあ いいってことよ
あら 直さん いけるね
- へい 1升や2升なら - そいつは話せる
まあ あきれた 見かけによらないもんね
おい お静 酒がねえぜ
- いいほうをつけてくれ - あるかしら
なきゃ 酒屋たたき起こして 買ってこい
だって酒屋さん ふた月も お払いが滞ってんのよ
情けないこと言ってやがらあ
四斗樽の10や20は買っとけ 商売じゃねえか
- おう - 豪勢ね
お静 何か買いてえ物があるんなら 遠慮せずに言ってみろ
- 今のうちだ なんでも買ってやるぞ - あら そう?
あたし 羽織が もう1枚 欲しい欲しいと➡
- 思ってたんだけれど - よし 買ってやる ほかにねえか?
それから 奥にある茶だんすね 実は道具屋さんから借りてんのよ
借りてるなんて ケチなことを言うねえ
買っちゃえ 買っちゃえ
あの... とても人手が足りないの
女の子を1人 雇おうと思ってんだけど
よし それも 買っちゃえ 買っちゃえ
- (健太)姐さん ちょっと - (お静)何さ?
- (健太)申し上げにくいんですが... - (お静)健さん また負けたのね
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