The first 147 lines.
ああ ほら もう 走らないで ちょっと
)凛太郎(りんたろう)君
お待たせ... しました
ご... ごめんね 待たせちゃって
いや 今 来たとこだったから大丈夫
きっと 今日は...
一生 忘れられない一日になる
そういえば 俺 自分から電話かけるの初めてだ
あっ...
も... もしもし?
あっ ごめん いきなり
今 大丈夫?
う... うん! 大丈夫だよ
今日は ありがとう 直接 言えてなかったから
こ... こちらこそだよ
みんなで花火 楽しかったね
そうだね
それと...
線香花火のとき いきなり あんなこと言って
困らせて ごめん
え... えっと その...
けど...
もう一度 会って その話をしたいんだ
和栗(わぐり)さんがよければ
時間 作ってもらうこと できないかな?
うん 分かった
あ... ありがとう
あの... 会う場所 私が決めてもいい?
うん 大丈夫
じゃあ...
お祭り
え?
夏祭り 2人で行きたいです
和栗さん!
あっ... は... はい!
あ... その...
凛太郎君
おなか すいてない?
え?
ん~ フフッ
気を遣わせてしまった
緊張してたの伝わってたよな
おいしい?
うん!
和栗さん 付いてる アメのかけら
ど... どこ? こっち?
フッ... アハハハッ
そんな慌てなくても
フフッ フフフッ
もう 笑い過ぎだよ
ご... ごめん
あっ...
あっ かき氷だ
おいしそう
向こうにあったよ 行く?
行きたい!
やっぱり 和栗さんが笑ってるとこ 好きだな
たくさん種類 あるといいね
うん! でも 迷っちゃうな~
フウ... おなか いっぱいだね
うん めちゃくちゃ食べた
大丈夫? どこかで座って休む?
あっ 俺は全然 平気だけ... ど...
いや 少し休もうか
はい
ありがとう
おいしい!
和栗さん 足 痛くない?
あっ これ?
全然 平気だ... よ...
あっ...
なんだかんだ 祭りを楽しんじまったけど
わざわざ 和栗さんが 時間を作ってくれたんだ
伝えなきゃ
和栗さん
はい
好きです
好きです
ずっと 今のままでいいって 思ってたんだ
ただ 和栗さんの笑顔が 見られるだけで十分だって
学校のことでも 迷惑をかけたくなかったから
でも あの花火のとき
和栗さんとの時間が 終わってしまうのが
すごく さみしくなって
ああ... 世の中のつきあってる人たちは
みんな こういう気持ちだったのか って分かったら
思わず 言葉がこぼれて...
すごく わがままで 欲張りなことを言ってるって
分かってるんだ
ものすごく自分勝手だって
それでも もう 今のままじゃダメなんだ
“つきあう”ということが
勇気や元気をくれる大切な人と
たくさん一緒に いられるためのものだとしたら
俺は そうなりたい
和栗さんと もっと一緒にいたい
俺とつきあってください
ごめん... こんな困らせるようなこと
本当に これは俺のわがままなんだ
でも...
わがままじゃないよ 凛太郎君
え?
初めて会った日のこと 覚えてる?
うん
うちの店に和栗さんがいて
多分 凛太郎君が思い出してる日と
私が思い出してる日は違うと思う
本当は あの日より前に 話したこと あるんだよ
私は その日 あなたに救われたの
俺に... 救われた?
うん
ていっても 私がケーキ屋さんに 通うようになったのも
凛太郎君が きっかけなんだけどね
私ね そのときのこと 今でも はっきり思い出せるんだ
去年の冬
その日は雪が降ってて
でも 私は 傘もマフラーも忘れちゃって
早く帰らなきゃって思ってたときに
あのケーキ屋さんの前を たまたま通りかかったの
そのころ いろいろつらいことが多くて
大好きなケーキを見ても あまり 食べたいなって思えなくて
だけど お店から感じる 温かい雰囲気にひかれて
つい お店に入っちゃって
そのとき 中にいたのが 凛太郎君だったの
それで ケーキを注文して ひと口 食べたら
その味が あまりに温かくて
おいしいって思えたのも久しぶりで
思わず その場で泣いちゃったんだ
そんな私を 凛太郎君が励ましてくれたんだよ
え?
フフッ
覚えてないでしょ?
うん 覚えてない
アハハッ やっぱり
ご... ごめん 待って! 今 思い出すから
フフフッ いいよ 思い出さなくて
そのほうが私はうれしい
今になって 改めて思うんだ
きっと あなたは あのとき いたのが誰であっても
同じことをするんだろうなって
けど 私は あなたに救われた
あなたにとっては 当たり前の その優しさが
私には特別で
苦しくなるほど うれしかった
だから いいの 思い出さなくて
いいの
凛太郎君
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