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で 結局 今日の話ってのは何だね
ねえ 君
我がナショナル・シューズは 営利事業だ 商売なんだぜ
そうだ
ところで この靴を もう一度 見直してみたまえ
この靴で これ以上売れ行きが 伸びると思うかね
まあ 侍ちたまえ
もちろん会社が現在 赤字だってわけじゃないんだ
また この靴は確かに いい靴だ 立派な靴だよ
だがコストが高すぎる
それにデザインが古臭い
それから もう一つ
丈夫すぎる
適当に壊れてもらわにゃ 売れ行きは伸びんよ
いいかね 権藤さん
女にとっちゃ靴はアクセサリーだ
帽子やハンドバッグと同(おんな)じだ
まず イカすデザイン 手頃なお値段
それに女の子は飛びつく
その通りだ
しかるに 我がナショナル・シューズは 実用的かもしれんが どうもな
ねえ 君 今時 実用の観点から 女の帽子を作る奴はおらんのだよ
靴だってな
靴と帽子が同じだっていう説には ついていけんな
早い話がだ
帽子は頭の上に乗っかってるだけだ
ところが靴は女の目方を乗せて歩く
一本参った
しかしね 君だって うちの製品が このままでいいとは思わんだろう
この1年 売れ行きが さっぱり伸びんのは なぜか
わしは重役の1人として 黙っちゃおれんよ
だから我々は こうやって・・・
で 私にどうしろと言うんだね?
よし ざっくばらんに言おう
今 この部屋には
ナショナル・シューズの 最高首脳部がそろってる
私は販売を兼ねた営業全般を 見てる専務だし
君は工場(こうじょう)担当の常務だ
石丸君はデザイン担当だし 宣伝は神谷君
みんな重役会のメンバーだ
この河西(かわにし)君も 君の片腕で いずれは重役の椅子に座ってもらう人だ
そして我々はみんな―
会社の癌がどこにあるか 嫌というほど知ってる
ほう どこだね?
社長だよ
あのおやじときたら堅牢無比 兵隊靴が理想の靴なんだからな
でも そのおやじが株主総会を 牛耳るだけの株を握ってるんだから
手も足も出んよ
ところで 君
ま これを見たまえ
どうだ このスタイル このセンス 女の子は飛びつく
傑作だよ 石丸君の
第一それは これの半分の 製造工程で出来るんだ
どうだね
ふん おやじに見せたら 何て言うかな
おやじには もう何も言わせない
おやじは確かに まとまった株を 握ってる
しかし我々が力を合わせればだな
おやじの持ち株は25パーセントだ
君たち合わせて21パーセント・・・ おやじを追い出すには足りないぜ
権藤君
我々は君の持ち株も 計算に入れてるんだ
どうだね 一口乗らんかね
君の持ち株は13パーセント これを加えれば34パーセントだ
25パーセントのおやじを 追い出すには十分だぜ
ところで 新しい社長は誰だね
そりゃ もちろん 君も候補者の1人だよ
しかし
でもね この新方針を打ち出したのは 馬場さんなんだし―
その馬場専務が次期社長
常務の君が専務に昇格
まあ その辺が妥当なところじゃ ないかな
おやじさんのやり方も 度が過ぎるかもしれないが
少なくとも いつも まともな靴を作ってきた
ところが君たちは こんな ゴミみたいな靴を作りたいと言う
まあ 聞きたまえ
俺は16の時から見習工を振り出しに
ほぼ30年間 軍隊にとられた期間を除いて
ナショナル・シューズの中で 生きてきた
あの工場(こうば)のことなら どんな音も どんな匂いも知り尽くしている
いろんな靴を作った
そのどの靴のことも 私は覚えている
みんな いい靴だ しっかりした靴だ
今更 こんなガラクタにナショナル・ シューズの名を付けたくない!
君!
こんな靴は ひと月とたたんうちに バラバラになっちまうぞ
こいつにはスチールのシャンクも 入ってない 中底はボール紙だ
ミシン縫いの手間を惜しんで 何もかも接着剤で貼り付けてある
何だい この安手な裏革は
こんな物 君たちは 金をとって売ろうというのか?
しかし そのサンプルは原価がだな
今までのコストじゃ 利益が上がらんから
律儀一点張りじゃ商売に・・・
商売ってことは百も承知だ!
私の商売 私が好きで好きで しょうがない仕事だ
靴は私の生き甲斐だ こんないい加減な仕事はできん
ふん それでこれからもおやじさんの 命令通り 兵隊靴を作るってわけか
おやじも駄目だ 違う
おやじも駄目 私たちも駄目だ それで?
俺は 俺の理想の靴を作る
歩きやすく 丈夫で しかもデザインのいい靴を作る
もちろん コストは高くつく 純益は少ないだろう
しかし 長い目で見れば その方が本当の利を上げるよ
ロマンチックなことを 言ってるが 君
君にそんなマネは させやしないよ おやじさんも 我々も
早い話が おやじさんと手を握れば 我々の持ち株は46パーセント
13パーセントの君なんか すぐだって追い出せる
どうぞ 株主総会は来月だ!
ああ 君 みなさん お帰りだ お見送りしてくれ
はあ
おや もうお帰り?
これは奥さん
権藤はどうしたんです お見送りもしないで
いや
ははは・・・ では 奥さん
あなた あの方たちと何か?
何でもない
何でもない顔つきじゃ なかったわ
心配するな お前の知ったことじゃない
仕事の上のことだ
あなたったら
何でも仕事の上のことで 片づけちゃうんだから
奴(やっこ)さん どんな切り札を 隠してんだ?
はあ?
とぼけんなよ
片腕の君が 奴さんの企みを 知らないとは言わせないぜ
ちきしょう 人を叩き出しやがって
よほどの自信がなけりゃ 我々を追い出せるわけがない え?
奴は何だって ああ自信たっぷりなんだ?
さあ なぜ じかに お聞きにならなかったんです
減らず口を叩くな
あいつが何を企んでるか 知らんが
それをぶっ潰す手助けをしてくれるなら 重役の椅子を約束してもいい
誘惑しないで下さいよ
いつまでも権藤の片腕でもあるまい よく考えるんだな
純ちゃん もうおやめなさい
大変な剣幕で帰りましたよ
大丈夫なんですか
ふん まあ見てろ
何かまた もめ事を始めたのね
ええ 何かありそうですね
奴らは俺を追い出す気だが どっこい その手は食わん
ちゃんと手は打ってある
大仕事らしいですね で 一体どういう?
ふん すっかりまとまるまで 話したくないな
とにかく 奴らの息の根を 止めてやる
純も あなたにそっくり
殺し合いが好きで困るわ
純ちゃん
ん?
あら 進ちゃんなの
今度は僕が保安官なの
純 今度はお前が追われる番か
うん
追われる番でも 逃げてばかりいちゃ駄目だぞ
うまく侍ち伏せして 保安官なんか やっつけるんだ
あなた
男はな やっつけるか やっつけられるかだ
さあ行け どっちも負けるな
うん
あなた だんだんひどくなるのね
何が?
お仕事のやり方
私 これ以上 人を蹴落としてまで 出世して頂かなくていいわ
女には分からん
俺は専務になりたいのでも 社長になりたいのでもない
ただ俺の作りたい靴を 作りたいだけだ
はい はい はい そうです
え? 大阪ホテル?
大阪 かけましたか?
ああ ちょっと侍って下さい
ああ もしもし 310号室 こちらは権藤
ああ もしもし 俺だ どうした?
話はついたか ん?
値段は?
あの粋の中で? ほう
いやあ そいつは大出来だ
うん よし じゃあ すぐ話を決めてくれ
急ぐんだ
話を決めたら折り返し電話をくれ ああ 今夜中に手付金は届ける
ああ はいはい じゃあ頼む
おい 大阪へ行ってもらうぞ 飛行機の予約をしろ
はい
ああ 2階のを使え
それは大阪からの返事に 空けておきたいんだ
はい
ねえ 大丈夫?
私 何だか怖いわ
ああ もしもし ああ 俺だ
うん 万事OKか よし ご苦労
ああ ちょっと侍ってくれ
どうした?
10時のが取れました
もしもし 10時の飛行機で 河西をやる
5千万 小切手で持たせる いいな それで
うん じゃあ
おい 乾杯だ
お前たちにも内緒にしてきたんだが
もう話してもよかろう
俺の持ち株はな たったの13パーセントじゃないんだ
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