The first 200 lines.
(棍こんを打ち合う音)
(武官) ふっ うっ はっ!
うっ!
どうした 李白リハク 集中しろ
(李白)ああ…
すまん
(やぶ医者)掃除?
わざわざ 嬢ちゃんが やらなくても
他に頼めば…
(猫猫マオマオ)他に頼んで
もし 薬をすり替えられたら どうしましょうか?
(やぶ医者)うっ…
(猫猫)宮廷の医局では
薬の管理が不十分だったことで
減給の罰を受けた 医官もいるそうですよ
(やぶ医者)ひっ!
(猫猫)にゃ~ (やぶ医者のおびえる声)
湿気が多くなる前に きれいにしてやらないと
あとの祭りですよ
はい
フゥ… やっと一段落
やっぱ 疲れた時は甘い物だね
(猫猫) このおっさん ボンボンだよな
この季節には手に入らない サツマイモも そうだが
当たり前のように紙を皿に…
ん?
いい紙 使ってますね
おっ 分かるかい?
うちの実家が村をまとめて 作っているんだ
宮廷に納めている御用達なんだよ
すごいだろ
すごいですね
知り合い価格で 安くしてもらえないだろうか
(やぶ医者)昔は 作れば作るほど もうけられたんだ
他国にも どんどん輸出して
子供の頃は 好きなお菓子を 何でも買ってもらえたなあ
でも…
先帝の母君が 木の伐採を禁じてからは
うまくいかなくなってしまってね
違う素材で作り始めたら 貿易もダメになって
私たち家族は責められたものだよ
先立つものがなくて 姉さんが後宮に行っちゃって
妹まで行くなんて言うから
代わりに私が ここへ来たんだ
なり手が少ない宦官かんがんのほうが 高く売れたんだよ
結局 姉さんとは 会えずじまいだけどね
(猫猫)ふーん…
思ったより 苦労してんだな
(李白)ハァ…
ああ…
(白鈴パイリン)ウフッ
うあ~!
ハァ…
(猫猫)失礼します 掃除の続きを…
(やぶ医者)ああ 嬢ちゃんか
(猫猫)うん?
(やぶ医者)妹から 手紙で
うちの紙が 御用達でなくなるかもしれないって
(猫猫)これは確かに 宮廷に卸せる質じゃないな
御用達って つくと つかないとでは
売り上げが大きく変わる
(やぶ医者)どうしてなんだろう
せっかく もっと たくさん 紙を作れるようになるって
言っていたのに
(猫猫)たくさん作るというと 手間を省いたということですか?
そんなことするわけないよ
力仕事を 牛に任せるようになったんだ
材料も工程も 昔から変えてないのに
(猫猫) これでは掃除どころじゃないな
そこらの店に出回っている 粗悪品と違い
不純物もなく 繊維も均等に砕かれていて
厚みにムラがない
問題は表面のけばだちと…
ハッ…
強度か
昔ながらの工程とは?
普通の紙作りと一緒だよ
ただ うちは材料を砕く方法と
糊のり作りに こだわってて…
あっ それは言えないよ
(猫猫)こういうのは べらべら話さないんだな
水なんかも こだわっているんですか?
(やぶ医者)ああ 糊が適度に固まるように
湧き水を くみおいているよ
湿度を調整するためだけど
これ以上は秘密だよ
(猫猫)牛… そして くみおいた湧き水
ぴきーん!
糊は 米のとぎ汁でも 煮込んでいるのですか?
(やぶ医者)いや ちゃんと 小麦の粉を溶かしているよ
じゃないと 固まりが悪いから…
あっ!
嬢ちゃん 今の話は忘れてくれないかい?
はい
では 牛は どこで飼っていますか?
(やぶ医者) そんなことまでは分からないよ
(猫猫)そうですか
どうぞ
葛湯かい?
嬢ちゃん 分量 間違えているよ
湯飲みに張りついて 飲めないじゃないか
(猫猫)すみません
飲みやすくする方法を 教えますので
まねしていただけますか?
こうして なめた さじで 混ぜるのを繰り返します
何か行儀悪いなあ
おや
とろみがなくなったねえ
(猫猫)そうでしょう
葛湯と糊って よく似ていますよね
んん… 似てなくもないねえ
唾液を混ぜたら
糊も どろどろじゃ なくなるのかねえ
そういうことです
そういうことって?
(猫猫)察しの悪いヤブだ
牛って 口の中に たくさん唾液をためていますよね
念のため どこで水を飲んでいるか
確かめてはいかがでしょうか?
ハッ! 妹に手紙を出さないと
(慌てる声)
(猫猫)今日は失礼しますね
(やぶ医者の慌てる声)
(猫猫)ただ今 戻りました
(紅娘ホンニャン)あっ 猫猫
すぐ来てくれって あなたに連絡が…
ハッ…
場所は どこでしょうか
(李白)妓女ぎじょの身請け金って いくらくらいだ?
(猫猫)あ…
翠苓スイレイの件かと思って来たのに
やはり 駄犬だ
聞いてくれよ 嬢ちゃん!
こないだ 緑青館ろくしょうかんに行ったら
三姫さんひめの1人が 身請けされるって聞いてさあ
(猫猫) それで 白鈴姐ねえちゃんのことが
心配になったと
ぴんきりがありますけど
(李白)超一品で
(猫猫)分かりました
とりあえず 相場は時価なので あくまで目安ということで
(李白)単刀直入に頼む
いくらだ
(猫猫)難しいよな
身請け金は 妓女が あと何年 妓楼で稼ぐかという逆算に
多少 色をつけた金額
その倍ほどの値をつけられるが…
嬢ちゃん
(猫猫)もし 白鈴姐ちゃんが 身請けされるとしたら
古いなじみで候補が2人
ふ… 2人?
(猫猫)1人は交易商の大旦那
緑青館が傾いた時も通ってくれた 好々爺こうこうやです
もう1人は お得意の上級役人
まだ若く 三十過ぎ
夜の遊戯のお相手として なかなか 馬が合うそうですが
翌日 少し疲れている点が 気になります
身請けしたあとの生活を考えると どちらも…
うーん…
(李白) 疲れる? どういうことだ?
(猫猫)白鈴姐ちゃんは 舞踏を得意とすると同時に
夜に負け戦がないことで有名だ
欲求不満になると 誰彼なしに食指を動かす
つまり 色欲魔だ
(白鈴)イヤ~ン
(猫猫)けれど…
けれど?
(猫猫)私が おやじに引き取られるまで
緑青館で面倒を見てくれたのは
やり手婆ばばあと三姫だ
特に 出産経験はないが 母乳の出る―
特別な体質だった姐ちゃんは
“かあさん”に近い存在である
姐ちゃんが どう考えているかは 分からないが
あの日々を思い出すと もったいないと思う
彼女は色欲の強い女であるが
それと同じくらい 母性を持った女である
けれど 何だ?
(猫猫)ふん…
(唾を飲み込む音)
(猫猫) 李白様は 姐ちゃんの仕事を
十分 理解した上で惚ほれている
多少 駄犬っぽいが 根は真面目そうだし
女のために出世しようという―
愛すべきバカなところもある
何より 体力は絶倫だ
ふん…
身請け先としては悪くない
李白様 お給金は いくら もらっていますか?
(李白) いきなり 何言いだすんだ
(猫猫)年に銀800ほどですか?
おいおい…
(猫猫)では 1200? (李白)うっ…
(猫猫) 年に銀1000枚といったところか
(李白)足りないか? (猫猫)足りません
(猫猫) 即金で1万は欲しいところです
なっ…
(机をたたく音) (李白)い… 1万?
(宦官たち)ん?
(猫猫)安い妓女なら400ですが
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