The first 200 lines.
どうせ掃き溜めだ
ふむ それで
だからさ
誰が何てったって もう女房稼業は真っ平
うーん うーん
何 唸ってやがんだい
へん おかしくって
たとえ向こう様が お隣のご大家でも誰が たいけ
嘘つきやがれ
何だって
嘘つけってんだよ
てめえ 下っ引きの島造と くっつくんじゃねえのかい
へん そればっかし 待ってやがるくせに
何さ! 何だって人つつっくんだよ
おめえ 目 覚ましたまま 夢見てやがるから
ちょっと起こしてやったのよ
ふん 余計なお世話だ お前の邪魔してやしまいし
ほら また… よしない
ばかな夢 見るんじゃねえよ えっ?
おめえは ちょんの間 八文の夜鷹さ ああ?
そんなおめえ 生娘みてえなこと 考えちゃいけねえよ
全く 女は嘘つきだ 自分にまで嘘つきやがる
お黙り! お前こそ何だい
自分のかみさんが使いものに ならないからってさ
犬みたいに 人のお尻 嗅ぎ回ってさ へん 全くいいザマだよ
何だと!
へん 図星だってね
このアマ
お前さん また喧嘩で夜が明けるんだね
後生だから怒鳴らないで
あーあ またメソメソか
ほんとに来る日も来る日も…
せめて死ぬ時だけでも 静かにさせておくれな
騒いだって往生の妨げにゃ なるめえ
でもさ お前 よくこんな悪党と 暮らしてきたもんだねえ ほんとに
ほっといて…
いいから ほっといて
ほんとだよ お前さんがね 辛抱強すぎたんだよ
どうだい ちっとは胸が楽に なったかい?
おい お滝 そろそろ出掛けねえと ショバが取れねえぜ
あいよ
はい
飴 あげようか
せっかくだけど何にも
何を食べたって無駄だもの
いいから おあがりよ ね?
飴はね 咳にいいんだよ
商売もんで何だけどさ ここ置くからね いいかい
じゃ 御前
ろくでなし!
この…
ゆんべ 俺を殴りやがったのは誰だい
誰だっていいじゃねえか
よかあねえよ 何だって殴りやがったんだい
博打 打って イカサマすりゃあ 殴られんのは あたりきよ
ん?
あっ 思い出した ちきしょう あいて
今におめえ 本当に地獄へ落ちるぜ
何を 間抜けめ
地獄にいる奴がよ どうして地獄へ落ちるんだ
な… 何だって
いいから さっさと降りて 部屋の掃除でもしな
今日は殿様が掃除番だ
やい 殿様
そんな暇はねえや
これからお滝と一緒に ふん お出ましだい
知るけえ そんなこと
とにかく掃除番は おめえだ
おいら 人の分まで働くの 真っ平だ
おめえがいやなら そこのお嬢様が やってくれるとさ
誰が いけ図々しい
さっ 出掛けるよ 御前
おう へへっ
よいしょ
ああ 今日はばかに重いぞ
ふん とんだ殿様だ
おい
おい
ちえっ また俺か
ちょいと あんた
何だよ
あたしゃいいから お前さん おあがりよ
おめえ 食わねえのか?
あたしゃ食べたって仕方がないよ
でも あんた働くんだから
くよくよするなって まだ 何もおめえ…
もう駄目だよ あたしゃ おっつけ…
さっ お食べよ ねっ
ほんとだよ
おいら 埃を吸っちゃいけねえんだ
医者が言ったんだ
“お前のゴローロップは 酒毒でやられてる” しゅどく
五臓六腑
そうよ ゴローロップさ
ふん 舌に来てるぜ
間違いねえ
あと半年もすりゃあ 押しも押されもしねえ よいよいさ
何をばかな 真面目な話だぜ
おいら ただゴローロップを 酒毒でおかされてるだけだ
ただ… だけ… か
ええ そうよ
つまり掃除をして埃を吸ったりしちゃ いけねえんだ
それ酒は養寿の奇品といえども 多く喫する時は… と来らあ
何だい そりゃ
うん? 文句さ まだあるぜ
巧言令色鮮し仁… と来ら なあ
何だい そりゃあ
知らねえ 忘れちまったい
じゃ なぜそんなこと言うんだ
そうよな
つまり 俺は
当たり前の人間の文句にゃ 飽き飽きしたんだ
毎日毎日 どいつもこいつも 同じことばっかり言ってやがる
だから ちんぷんかんぷんの 妙な文句が好きなのさ
うん 芝居にも そういうのが いろいろあらあ
うーんと…
そろそろ掃除に 取りかかったらどうだ
うるせえぞ
おいら 考え事してるんだ
ええと… 思い出せねえな
ふん 思い出せねえことばっかりよ
おいら これでも学のある方 だったんだがなあ
学なんて くだらねえよ
大事なのは生まれつきってことさ
俺の知ってる役者に
銭勘定は指の数だけけって 間抜けがいたが
いざ芝居をやらぜると 見物が沸いてよ
小屋が割れけえるって騒ぎさ
おい 五文くんな
おいら 二文しかねえ
つまり生まれつきってことが一番
五文くんな
そしたら おめえの生まれつきは 一枚看板のよ
極め付き上々吉のよ 千両役者だと思ってやらあ
なに
おい留 五文くんない
くそ食らえ!
吠えるなって 一文もねえのは 先刻ご承知さ
ねえ あんた 息が詰まるよ 切ないよ
どうしろってんだよ
戸を開けてやりな
そうはいかねえ
てめえと違って こちとらあ 土間に座って冷え込んでるんだ
開けてもらいてえのは 俺じゃねえよ
はいはい言ってたら切りがねえや
ああ 痛え 痛え
どれ 板っぺらでも拾ってくるか
おい ところで大家もおかみも 今日はさっぱり面 見せねえな
へへ くたばったんなら ありがてえが
どうだい よくねえかい
息が詰まって… ねえ
そんなら表へ連れてってやろうか
ちょうど空き地に 日当たりができる頃だぜ
さあ 起きな
ほら しっかりしな
いいかい ほれ
大丈夫かい
俺だって病気だあ
ゴローロップを酒毒に…
よう 似合うぜ
とんだ道行きだな
花道をあけな 引っ込みの邪魔にならあ
さっ おじゃ
なまんだぶ なまんだぶ…
相変わらず ガリガリやってるね
何?
いやさ ご精が出るってことさ
おい うちのカカア 来なかったか ええ?
知らねえよ
ところで おめえ えらく間口をはってるね
月三十文の間代でさ
寝床に三畳 そのうえ土間にも陣取る
とにかく十文は 値上げをしてもらわにゃ
いっそ 絞め殺しやがれ!
お前さんを絞め殺しても 一文にもならねえんでね
まあ せいぜい長生きして いい目を見な
てめえ 喧嘩売る気か!
ああ いて いて いて
脅かすな
ああ… かみさんー
日向に座らせて よくくるんで 置いてやったぜ
お前は親切もんだな
いいことをしてやった
善根を積めば その報いは必ずある
いつあるんだい
あの世でさ
それよか 今すぐ その報いをくんなよ
借金を半分負けな
また茶にしやがる
いいかね 人の親切は 銭金じゃ買えねえ
親切は親切 借金は借金
味噌もくそも一緒にしちゃ いけねえ
死に損ないの ごうつくばりめ
なに
俺が来ると みんな逃げ出しやがる
鬼でも逃げ出さあ
ふふ ご挨拶だな
だが俺は お前達を子供だと 思っている
大家といえば親も同然
鬼も同然
No comments yet. Be the first to leave one.