The first 200 lines.
はい どかせ
邪魔だ
弥吉 ここで見張ってろ
へえ
おい どうしたんだい?
さあ どうしたんでしょうね
おはよう
何かあったんですか
首くくりですって
おはようございます どうしたんです?
ん? うん
おっ 兼さん どうしたんだい 誰が首をくくったんだい?
よっ おはよう
どうもこうも 朝っぱらから 俺ぁ 縁起でもねえ物 見ちゃったよ
おっと いけねえ おめえ 出ちゃいけねえ
冗談でしょう 親方 あっしは何も あの首くくりと…
分かってらあな
誰も おめえが 首くくりの足を 引っ張ったとは言わねえよ
おい 金魚屋 待て
お調べが済むまで 誰も出ちゃいけねえ
そうでござんすか?
あーあ いい天気だがなあ
ざまぁねえな 源公
2~3日 雨でよ たまに晴れたと思ったら
首をくくりやがるし
おお おいおい 外へ出ると叱られるぜ
何がいけねえ? 誰が叱るんでえ?
べらぼうめ 俺の家から俺が出て行くのが
なぜ いけねえんだい
あっ いけねえ こいつぁいけねえ
叩きゃ ホコリの出る体ってね
おや 何か忘れ物かい?
お調べが済むまで 誰も出ちゃいけねえんだとよ
まあ そうかい せっかくお天気がいいのに
何だって こんなにいいお天気に 首をくくったんだろうね
昨日も 一昨日も雨だからね
同じやるなら 雨の降ってる間に やりゃあいいのにさ
気の利かねえ野郎だよ
ばかだね お前さんは
首をくくる身になってごらんよ
お天気の事なんか 考えてられるもんかね
そうか
侍のくせに 首をくくるなんて おかしいや
侍なら 侍らしく 腹を切りそうなもんじゃねえか 腹を…
お年寄りだったからね
いやあ いくら年寄りだって お前 侍が首をくくるなんて お前…
刀がなかったんだよ 刀が
だって お前 毎日 長いやつ1本 差してたじゃないか
あれは竹光だよ
あ なるほど
竹べらじゃ腹は切れねえや
やいやい こいつら どけっ
うるせえガキだな
どこの誰だか分からねえ者に 店を貸す奴があるか
誰が引受人だ
こんな事にはなろうと 存じませんので
なに? おめえん所じゃ 引受人がねえのに店を貸してんのか
いえ めっそうな そんな事はございません
何しろ 引受人が無くては困ると 思っておりましたが
うちの婆ぁが まぬけなもんで ございやんすから
婆ぁのまぬけを聞いてるんじゃねえや いい加減にしろい
いつも面倒が起きるのは
おめえん所の長屋に 決まってるじゃねえか
それは…
まあ いいや どうせ おめえは
番所へ来てもらわなくちゃ ならねえんだから
え? 私が番所へ?
当たり前だ
大家が叱られてるぜ ヘヘヘ
やいやい 何をぼんやり 突っ立ってやがるんだ
てめえ達のお行儀が悪いから 大家さんが こういう事になるんだ
やい 甚助
てめえ 泣くのと笑うのと 間違ってやしねえか
ばか野郎 笑ってやがる
また 市も 市じゃねえか
按摩の目の見えねえのは 我慢するとしてやって
てめえ つんぼじゃあるめえ 壁一人 隣に寝てやがって
“へえ 私は何も存じません”なんて 情けねえ野郎だ
だって 大家さん そりゃ無理っていうもんだよ
何が無理だ 大家の無理は当たり前だ
おい ここは誰がいるんだ
へえ ここは 髪結いの新三でございますが
あきれた野郎だ この騒ぎに まだ寝ていやがる
おい 新三 起きろ 起きねえか
新三 聞こえねえのか?
留守かな
あ いやがった
誰だ うるせえ奴だな
誰だもねえもんだ 俺だ 大家の長兵衛だ
早く起きねえか
ハハハ 長兵衛さんですか 何か用ですか おやっ?
あきれけえった奴だ この騒ぎを てめえは知らねえのか
へ? ど どうしたんです?
金魚や 金魚 メダカ…
へい ご苦労様です
やいやい 新三 なんて また意気地の無え奴だ
もうちょっと ど性骨のすわってる 奴かと思ったら
なんだ あのザマは?
まるで借りて来た猫だ
うんともすんとも ぬかしやがらねえ
ああ言う所へ出たら もっと はきはき口をきくもんだ
(新三)だって 大家さん 一人で しゃべってるんだもの
ハハハ
(源公)金魚や 金魚…
メダカ えー
お? おや
(新三)おう 何だ 源公か
(源公)新三 おめえ 何ともなかったのか?
(新三) なあに 何でもありゃしねえや
どうだ 商いの方は?
(源公)いけないねえ 何しろ 朝の出っぱなをくじかれたろう?
どうも いけないね まだ5匹しか売れやしねえんだよ
(新三)そうか じゃ
(源公)えー メダカー
金魚や 金魚…
何が金魚でえ くそ面白い事もねえよ
えー 金魚や 金魚
何のこったい 金魚ってえのは?
けっ この野郎 のぼせるねえ
だがよ おめえ こうして朝から 金魚 金魚って言ってるとね
金魚が何だか 俺が何だか 訳が分からなくなってくるよ まったく
あー 金魚や 金魚
やかましい あっち行け あっち行け
ねえ 大家さん
人間って奴は こういう時に 酒ってもん 飲んだら
どういう事になりやしょうね
そんな事は おら 知らね
あーあ 及びもつかねえか
あー 金魚や 金魚…
ねえ 大家さん えー 今夜は ひとつ長屋中で
あの仏のお通夜をして やろうじゃありませんか
(長兵衛)お通夜? (新三)へえ
こんぱく “一晩は 魂魄この世に とどまる”って言いやすから
そりゃいい事だな
少しの間でも 同じ長屋に住んでた男だ
皆でお通夜をしてやれば 喜ぶだろう 仏もな
じゃあ 大家さんに 5升出していただいてと
なっ 何を わしが 5升を出すんだ?
何をって酒じゃありませんか
(長兵衛)酒? (新三)へえ
なあ 源公 5升出してもらえりゃいいな?
(源公)とほほっ なるほどねえ
えー だが 少し足りねえかな? こいつぁ
(新三) なあに 足りねえところは まあ
向こう前の俺が工面するとして
じゃ 大家さん 5升頼みます
(長兵衛) ばか野郎 何の因果でわしが
酒を買わなけりゃならねえんだ
(源公) 功徳になりやすよ 大家さん
(長兵衛) 酒なしでお通夜しなさい 酒なしで
その方がよっぽど功徳になるわ
(源公)金魚や 金魚…
(新三)ねえねえ 大家さん
前の家は これで3度目でっせ
“あの家は縁起が悪い 幽霊が出る”なあんて噂が立つと
借り手がなくなりまっせ
ここは一番 酒でもおごって
派手にお通夜をした方が 良くありませんか
5升ぐらい 安いもんだ
(源公)違えねえ
酒の5升や6升 安いよ安いよ
ねえ フフッ ククッ ありがてえ ありがてえ
金魚や 金魚…
(長兵衛)危ね!
(新三) あっ また切れましたね 大家さん
(おくま) 海野さんも いらっしゃいましよ うんの
(海野)いや わしは不調法で…
(おくま)さあさあ さあさあ ねえ いらっしゃいまし
(歌声)
(歌声)
(卯之公) 新三兄貴 ありがてえなあ
おめえの顔から 後光がさす様な気がすらあ アハハ
おい よせやい 河童の皿が 干からびたんじゃあるめえし
拝む手は ねえやな
干からびた河童の皿と おいでなすったね 分かるねえ
長屋にも 兄貴みてえな男がいるから 頼もしいよ
(卯之公)まあ 一杯 (新三)よし来た
なんだい
おい 河童の水が切れてるぞ
アッハッハ
ないよ
よし 河童 河童の水
河童の水 河童の水と…
あきれた人達だよ
お通夜だか お祭りだか 分かりゃしない
死んだ仏に すまないって気が 起こらないのかねえ
(甚助)何を…
(藪市)しかし なんだな
人間って奴は月に一度 こういう事をやらんといかんな
元気がなくなるよ
(兼吉)そりゃ もっともだ
ど… どうだ 市 来月は おめえがやれよ
俺にやれって 何をやるんじゃ?
おめえが首をくくるんだ 皆 喜ぶぜ
ばっばっ ばか野郎
こらっ 源公 わしのを食ったな?
目が見えんと思って いつでも わしのそばへ座りやがる
これでも見えんと思っとるか
あれ あれ あれ?
与七 知ってるぞ
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