200 dòng đầu tiên.
これはこの物語の主人公の胃袋である
噴門部に胃癌の兆候が見えるが 本人はまだそれを知らない
うちの子供なんか 皮膚が弱いもんですからね
その水にかぶれて 体中変なブツブツができたんですよ
それにねえ 蚊の多いったら
第一 臭くってねえ
何とかならないですかねえ
あすこ埋め立てれば 立派な子供の 遊び場ができると思うんだけど
ちょっと お待ち下さい
課長 黒江町の下水溜まりのことで 陳情に来てるんですが
土木課
はあ
これがこの物語の主人公である
しかし 今この男について語るのは 退屈なだけだ
なぜなら 彼は 時間をつぶしているだけだから
彼には生きた時間がない
つまり彼は生きているとは 言えないからである
小田切君 いかんねえ 君 執務時間中に何だね
だって おかしいんですもの
おかしい? 何が
嘘クラブです 誰か これ回してきたんです
読んでみたまえ
“君 一度も休暇を 取らないんだってね”
“うん”
“君がいないと役所が困るってわけか”
“いや 僕がいなくても役所では―”
“全然 困らんということが 分かっちゃうと困るんでね”
駄目だ これでは話にならない
これでは死骸も同然だ
いや 実際この男は20年ほど前から 死んでしまったのである
その以前には少しは生きていた 少しは仕事をしようとしたこともある
しかし今や そういう意欲や情熱は 少しもない
そんなものは役所の煩雑極まる機構と それが生み出す無意味な忙しさの中で
全くすり減らしてしまったのである
忙しい 全く忙しい
しかしこの男は本当は何もしていない この椅子を守ること以外のことは
そしてこの世界では地位を守るためには 何もしないのが一番いいのである
しかし一体これでいいのか
一体これでいいのか
この男が本気でそう考え出すためには この男の胃がもっと悪くなり―
それからもっと無駄な時間が 積み上げられる必要がある
しかし公園を作るというお話ですと これは公園課の主管事項でして
公園を作るということより 衛生問題が主なようですな
するとこれは地区の 保健所の仕事になりますから
はあ それは衛生課の方へ
それは環境衛生係の方へどうぞ
ああ 予防課へどうぞ あちらです
防疫係の方へどうぞ
蚊が多いんですな すると虫疫係の仕事ですなあ
下水の水をどうするということは こりゃ市役所の下水課の管轄でして
元来あすこは暗渠になっとった所で
つまり上は道路になっとったんですね 道路課の了解を得ないとどうも
何しろ都市計画部の方針が 決まりませんのでね
区画整理課の方へどうぞ
確かあの水溜まりを埋める埋めないで 消防署と もめたことがありましたがね
何しろ あの辺は水の便が悪くて
冗談じゃない
我々の方としては ただ水が必要なだけで
それが蚊がわいたり発疹ができたりする 汚水である必要は少しもないんですから
第一あんな腐れ水 使ったら あんた ホースの掃除が大変ですよ
もっともあの辺に子供のプールでも できたら我々としても大助かりですがね
どうです ひとつ 区の教育課へ相談してみたら
たしか児童福祉係というのが あるはずですよ
ええ
しかしこれは児童だけの問題では ないですね
それに校舎の復旧もなかなか という状態でして
こういう大きな問題はやはり
その地区から出ておられる 市会議員の方に
ああ じゃあ僕が市の助役に 紹介状を書きましょう
なに 僕の名刺を持っていきゃ すぐに会ってくれますよ
さっ どうぞお掛けになって さあ
いや どうもご苦労さまでした
ええ… 実は皆さんのように
いろいろな苦情を率直に 申し述べていただくのは
我々の一番歓迎するところなんです
また市民課という窓口を新しく 設立したのも そのためなんです
どうかご遠慮なく どしどし
ああ 君 この方達を市民課へ ご案内して
そのお話でしたら土木課へどうぞ
8番の窓口です
何言ってるんだい
人をバカにするのも いい加減におし
このポスターは一体何のために 貼ってあるのさ
あたし達に 暇をつぶさせるためなのかい
あたし達はね お前さん達みたいな 暇人と違うんだよ
第一ね あたし達は ただあの臭い水溜まりを―
何とかしてくれって 言ってるだけじゃないか
土木課でも下水課でも保健所でも 衛生課でも消防署でも
そんなこたあ どうでもいいんだよ 何さ
それを何とかしてくれるのが 市民課じゃないのかい
もういい お前さん達には もう何も頼まないよ
ほんとにどこ行っても 人をバカにしてさ
民主主義が聞いて呆れるよ
帰ろう
あの… ちょっと
実はあいにく今日は 課長が休んどりますし
一つ書類にでもして提出していただくと 都合がいいんですが
あのですね
課長が休むなんて 全く珍しいことですね
うむ どうも最近 元気がないようだが
ええ しかしですね 長く休まれるようだと困りますね
それなんだよ 君
あの人のこったから風邪ぐらいじゃ 休むはずはなし
課長の判がないと どうにも動きがとれんしね
ええ そうですね
はあ… いや しかし 全く惜しいですね
とにかく あとひと月で30年間無欠勤の 記録が作れたんですからね
課長が休んで喜んでる奴もいるさ
上役が休むとすぐ その後釜のことを 考えるのが役人の…
よく薬飲んでたじゃないか 何だい あの薬
胃の薬よ
例のお昼のうどんかけ おつゆまで きれいに飲んじゃう人が
この頃ちょっとお箸を つけただけってことが ちょいちょい
うどんかけか
あれも大記録だな
俺の知ってる限り 昼飯は絶対に うどんかけだ
課長がもし… てなことになると 後釜は?
慌てることないじゃないの
あなた方にお鉢が回ってくるまでにゃ あとだいぶ死ななきゃ駄目よ
平岡さん 平岡たけおさん
はい
胃ですか
いやあ私も胃が悪くってね
慢性というやつですな
近頃じゃもう胃が痛まないと 生きてるような気がせんですよ
鈴木さん 鈴木孝さん
あの男はね
胃潰瘍だと言われてるんですけどね
私の睨んだところでは胃癌
そのものズバリです
胃癌といやあもう 死刑の宣告と 同じことですからな
医者は大抵 軽い胃潰瘍だと 言うんですよ
それからね“手術の必要はない”
“食事もまあ あんまり不消化な ものでない限り”
“好きなものを食べてもいい”
こう言われたら 長くって1年
もっともこういう自覚症状が出てきたら とてもそりゃ1年は無理ですな
まず
重いように痛む
何か気持ちの悪いゲップが 盛んに上がってくる
舌が乾きましてね
水やお茶ばっかり欲しくなる
そして下痢をする
下痢をしない場合には 反対に便秘する
黒い色をした大便が出る
それからね
あれだけ好きだった肉類が 全然食えなくなる
何食っても30分ぐらいで すぐに吐いてしまう
その時 1週間も前に食ったものが 出てきたとしたら事ですよ
もう せいぜい三月ぐらい
渡辺さん
渡辺勘治さん
渡辺勘治さん
はっ はい
どうぞ
ええっと
軽い胃潰瘍ですな
正… 正直に―
本当のことを
おっしゃって下さい 胃癌だとおっしゃって下さい
いや 今申し上げたように 軽い胃潰瘍ですから
手術は… 手術も不可能なんですか
もちろん手術の必要はありません 内科的に治ります
あの 食… 食事は
そうですな まあ
常識的に考えて あまり不消化なものでなければ
好きなものを上がって 差し支えありません
あの患者 1年ぐらいですか
いや まあせいぜい半年だな
半年?
うん
君がもし あの人のように 半年しか命がないとしたら
どんなことをするね
相原君 君ならどうだ
あの戸棚にヴェロナールが ありますわ
停電かしら
外灯 ついてるじゃないか 隣もついてるぜ
変ね お父さん留守なのかしら 鍵はどこだったかしら
お前のハンドバッグだよ
林さん 開けっ放したまま 帰っちゃったのかしら 無責任ね
通いの家政婦なんて だから困るよ
住み込みにしたって いくらも違いやしないのに
泥棒でも入ったら大損害じゃないの
それが親父の流儀さ 小役人のものの考え方だよ
ああ 寒い
家の中も表も同じ寒さだわ だから日本の家って いやあねえ
表で楽しんできても 家へ帰ると幻滅だな
もっと近代的な家が欲しいな
ねーえ
あたし達二人だけが住む家だったら 40~50万もあれば建つんでしょう
お父さんの退職金担保にして 何とかなんないのかしら
うん 親父の退職金 60~70万にゃなるね
と恩給が月に 1万2000~3000円って とこかな
それに貯金も10万ぐらいあるはずだよ
でもお父さん うんって言うかしら
うんって言わなきゃ 別々に暮らそうって切り出すんだね
それが親父にゃ一番きくよ
第一 親父だって退職金や貯金まで 墓ん中まで持ってく気はないだろう
(一枝の笑い声)
(一枝 息をのむ声)
No comments yet. Be the first to leave one.