岸辺露伴は動かない エピソード#16【懺悔室】
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NETFLIX オリジナルアニメシリーズ
(康一(こういち))あの… 露伴(ろはん)先生
今日は 露伴先生に
ぜひ お願いしたい ことがあって
(露伴) なんだい? 康一君
実は僕 この春休みに 外国に行くことになったんです
(露伴)ふ〜ん どこに?
イ… イタリアです
イタリア?
先生! 僕にヘブンズ・ドアーで
イタリア語がしゃべれるように 書き込んでもらえませんか?
なんで僕が そんなことを わざわざ しなくちゃいけないんだ
僕 1人で外国に行くの 初めてなので
どうなるか不安なんです
だから せめて言葉ぐらい 話せるようにしたいんです
お願いします!
(露伴)フッ
イタリアに行くのか
それじゃあ そこで体験した話をしてやろう
え?
君と会ったとき
あいつのせいで負傷して 連載を中断したことがあったろう?
その中断期間中 ストーリー新展開の取材のため
1人でヴェネツィアに 8日間ほど滞在していたんだが
そのときに偶然 取材した 不思議な話さ
(露伴) これから紹介するエピソードは そのときに
この岸辺(きしべ)露伴が 実際に この耳で聞いた—
恐怖の出来事なのだ
君は 懺悔室(ざんげしつ)というのを 知ってるかい?
(シャッター音)
(露伴)イタリアの 教会の中には必ずある—
木製の電話ボックスのような 部屋のことで
カーテンの閉まるボックスに 教会の神父が入り
もう1つのボックスには信者が入る
部屋と部屋の間には小窓があり
話す声は 聞こえるようになっているのだが
神父と信者の顔は お互い見ることはできない
信者は その小窓に向かって 自分の犯した過ちを
プライバシーを守られたまま 告白することができるのだ
人は心の中にある秘密というものを 何年も隠し続けることはできない
秘密が重大であるほど 心は苦しみ 悲鳴を上げるものだ
懺悔室は その魂の浄化のための場所であり
昔の人の英知なのだ
禁止なのだが 神父のいないときに ひそかに写真を撮ったり
彫刻のデザインや 材質の種類を調べたり
で ちょっと経験のために
実際に神父に告白してみるのも 悪くないと考え
ボックスに入ってみた
体験は リアリティを作品に生むからな
(扉が動く音)
(男)神父様 告白に参りました
私は深い罪を犯しました
(露伴)あっ…
(男)とても 話さずにはいられません 神父様
告白しなくては 夜も眠れません
(露伴)誓って言う
僕はカーテンのほうが 神父の入る部屋ということを
このとき知らなかった
この男は 僕を神父と勘違いしてしまったんだ
だが… これはラッキーじゃないか
深い罪とは なんだ?
このまま話を聞くのも悪くない
体験はリアリティを作品に生む
この男の話を聞くのは誰でもいい
結局のところ 神父に話したって思うことが
この男にとって大切なのだから
(男)神父様 どうかなされましたか?
(せきばらい)
(露伴) どうぞ 気になさらず続けてくだ…
いや 続けなさい
(男)あ… はい どう話したものか
いや あの日の夕方 そう…
話は あの日の夕方から始まるんです
私は当時24歳で 食品市場に勤めていました
下働きです
とうもろこしの入った袋を 車に積んだり 倉庫に運んだり
とてもつらい仕事で
ガールフレンドを作る暇も ないぐらい忙しく
私は この仕事が とても嫌でした
その日の夕方 6時すぎですが
よくあることで 残業していました
そこにです あの男が やって来たのです
フラフラした足取り やる気のない うつろな目
ゴワゴワの髪 臭う体臭
ひと目で分かりました
浮浪者です
(浮浪者) どうか… 食べ物を… 下さい
(男)情けない声でした
テーブルの上の 私の弁当を 目でチラチラと追ってたりして
私は急に腹が立ってきました
こっちは残業までしてるのに
こいつは今まで駅裏とか公園とかで ゴロゴロしていたくせに
食べ物をくれだと?
都合のいいヤツだ
(男)俺は働いて金をもらい それで食べ物を買っている
なぜ お前も そうしないんだ?
この荷を全部 倉庫にしまったら 食べさせてやろうじゃあないか
(浮浪者)は… は… 働きます
ですが 先に何か食べ物を…
5日も食べてないんです
本当です 少しだけでいいんです
食べたら必ず働きます 約束します
それは どうかな
賃金ってのは 終わってから もらうもんなんだぜ
やるのか? やらないのか?
あ… う…
おいおい! 何 小さいほう 1個だけ持ってるんだ
こっちだよ こっち!
あと1時間内にやってくれよ
俺は早く帰りたいんだ
ああっ…
(男)急げ急げ!
早く食いたいなら 早く終わらせることだぜ
怠け癖がついてるな ありゃ
ちょっぴり性根を鍛え直してやるか
ハア… ハア…
あ… ああ…
(倒れた音)
あ?
おい! 倒れたフリなんかして 怠けてんじゃあねえぜ
10分も働いてねえじゃあねえか!
(浮浪者)怠けてるように…
この俺が
怠けているように 見えるっていうのか?
うああ〜!
なんだ てめえは!
俺は今 暗い海よりも深い絶望の中にいる
お前から与えられてな
俺は忘れねえ てめえの顔は決して!
(男)ひいっ…
この報いは償わせてやる
俺は戻ってくる
お前が幸せの絶頂のとき 必ず!
お前を迎えに戻ってくるぜ
いいな!
ひっ ひい… うわ〜!
(労働者1)ああっ 見ろ! 袋の下に誰か倒れているぞ
(男)えっ? ハッ…
(労働者2)死んでるぞ!
(労働者1)うう… 死んでる!
(労働者2)医者だ 医者を呼べ!
(労働者1)けけ… 警察を呼べ!
(男)ああ!
(男)私は知らなかったんだ
本当に 5日も食べていなかったなんて
知らなかったんだ!
(露伴)ちょ… ちょっと待って
いや 待ってください
その浮浪者 最後にしゃべったの 今 死んだあとって言いましたか?
夢でも見たんじゃあないですか?
(男)夢?
夢だったら どんなによかったことか
神父様 本当に恐ろしいことは ここから始まるのです
それからの私は突然 不気味なほど いいこと続きになりました
遠い親戚から遺産が入るわ
サッカーのくじが当選するわ
その金で買った土地が 更に何十倍もの値で売れるわ
私の考えた とうもろこしを使った お菓子やコーンフレークが
会社で売り出すや 大ヒット
世界中で売れまくりました
それまでガールフレンドなんかと 縁がなかったのに
結婚したんですよ
ミラノコレクションに出ていた 元スーパーモデルと
使い切れないほどの 収入が入ってきました
今の家は 召使(めしつか)いが15人ほどいます
運転手も3人
このバカつきに 私は いつも不安でした
あの死んだ男のことが いつも頭の片隅にありました
そして 子供が生まれました
(娘)パパ! パパ!
(男) 母親似の かわいい女の子です
(娘)パパ 見て
いい? 見ててよ
もう〜 失敗〜!
(男)惜しい 惜しい ギリギリだったぞ
(召使い)お嬢様 目もつぶっちゃってましたよ
もう1回
(娘)うん!
(男)私は 自分の娘が 公園で遊ぶ姿を見て 思わず…
なんて私は幸せなんだろう
そう思ってしまいました
ぐわっ!
ああ… うっ!
約束どおり…
うう…
(浮浪者) 約束どおり 戻ってきたぜ
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