The first 173 lines.
お爺ちゃんの言うことをよく聞くのよ
ハンカチ持った 切符は 履歴書とスーツの靴は
まさかあんたそれで?
大丈夫 ちゃんと黒いの入れた
新幹線に荷物忘れないようにね
うとうとして乗り過ごしちゃダメよ
分かってる もう 毎年行ってたんだから大丈夫だって
ほら 帽子かぶって 熱中症になるよ
いいってば 大丈夫
行ってきまーす
彼に初めて出会ったのは
私が6つの時でした
暑い夏の日 妖怪たちの住むといわれる山神の森で
私は迷子になったんです
出口を求めて走りまわり 疲れて動けなくなって
寂しさと恐ろしさから とうとう泣き出してしまった私の前に
彼は姿を現したのでした
おい チビ
何を泣いているんだ
人だ 助かった
すまない
お前 人間の子供だろ
俺は人間に触れられると消えてしまう
人間に…って お兄さんは人間じゃないの
この森に住むものだ
じゃあ 妖怪さん?
でも 消えるってどういうこと
本当に人じゃないのね
子供を棒で殴るなんて
消えるってのは消滅するって意味だ
山神様がそういう術を俺にかけてる
人間に触れたら最後 それでおしまいだ
ご ごめんなさい
ほら チビ
そっち側持ちな 迷子なんだろ 森の外まで連れて行く
ありがとうー!
よせっての…
ご ごめんなさい つい…
なんかデートみたいですね
色気のないデートですね
お前は 怖がらないね
何を
いや
ここを真っ直ぐ行くと 山道へ出る
じゃあな
お兄さんはずっとここにいるの
またここに来れば 会える
ここは山神様と妖怪の住む森
入れば心を惑わされ 帰れなくなる
「行ってはいけない」 そう村の人たちに言われてるだろう
私 竹川蛍 あなたは?
と とにかく明日 お礼を持ってまたここに来ます さよなら
「ギン」だ
蛍
お爺ちゃん
蛍 この バカタレが
一人で山に入って 怪我でもしたらどうする
お爺ちゃん
あの森には妖怪が住んでるって本当
山神の森か さぁなー そういう言い伝えだ
子供の頃は妖怪に会いたくてよく友達と森に入ったもんだ
結局会えなかったが 目の端でチラチラと何かを見た気がしたよ
夏の夜なんかは森の中からおはやしが聞こえてきたり
そういえば岩ちゃんたちが森の中で夏祭りに迷いこんで遊んだって言ってたっけ
けれど 村の人間があの森で祭りなんかするはずもない
じゃあ あの祭りは何だったんだ
妖怪たちの祭りに迷い込んだんじゃないかって大騒ぎになってな
かー 懐かしいねー
お馬鹿だったね ガキンチョのころは
ここは山神様と妖怪の住む森
入れば心を惑わされ 帰れなくなる
来たね
本当にまた来るとは思わなかった
待っててくれたのねー!
学習しないな お前は
嬉しくて つい
ごめんなさい
ここは暑い 涼しい所へ行こうか
大丈夫だよ またちゃんと送るから
ギン
それ 人間の子供か
食べてもいいか
ダメだよ 友達なんだ
そうか 人の子 ギンの肌に触れてくれるなよ
もし 触れたら わしがお前を食ってやるぞ
あ 狐?
あれも妖怪だよ 化けて人を脅かすけど
根は臆病でいい奴だ
すごーい 本物の妖怪なんて初めて見た
本当にいたのね
すごい すごい
お前 俺のことを何だと思ってるんだ
ギンはのっぺらぼうか何かなの
何でお面を付けてるの
大した理由はない
俺のことはいい 蛍のことを話せよ
興味ある
あるから待ってたんだ
次の日も その次の日も
私は森へと通いました
山の中を 駆け巡って遊び回る夏の日々
こっち こっち
あっちのほうが眺めもいいんだよ
ありがとう
他愛ない事でも 楽しくて仕方なかった
ギン 眠っちゃったの
お面には触っても大丈夫なのよね
ごめんなさい
痛っ いってー
寝込み襲うとは おこちゃまは恐ろしいな
ごめんなさい でも 狸寝入りしてたんでしょ
普通だったろ
なぜお面をしてるの
こんな面でもしてないと 妖怪には見えないだろう
変なの
あのね ギン
私 明日からここに来られないんだ
この前 話したでしょう
夏の間に お爺ちゃんちに遊びに来てるって
だから 明日帰らなきゃいけないの
来年も来れるか
うん!
こうして 私は夏を心待ちにするようになりました
約束の夏 ギンは私を待っていてくれました
冷たーい
変な奴だな 水が冷たいのは当たり前だろう
ギン
ギン
危ないギン それは人の子だ
触れられたらお前は消えてしまう
ありがとう 大丈夫だよ
触れてくれるなよ 人の子よ
はい
ギン ギン ギン…
気をつけて
ギンよ 気をつけて
ギン ギン ギン…
妖怪さんたちは触ることができるんだよね
そんな夏が二度三度と続き
蛍 どこだ
蛍 ほた…
何やってんだよ お前は
驚いた顔 見てやろうと思ったんだけど
私といる時くらい 時々はお面外してくれる
いいけど 何か意味あるのか
別に意味はないけど
危ない ほた…
危なかった
そうね
すまん 蛍
大丈夫か
でも よかった
ね ギン
何があっても 絶対 私に触らないでね
ね
絶対よ
次の夏も 次の次の夏も 私は森へと通ったのでした
行ってきまーす
ギン 今年も来たよ
じゃーん 中坊になりました
なんか女みたいに見えるぞ
女ですよ 一応
行こうか
うん
あれ なんか
そうか
中学校になっても 小学校の頃友達もいっぱい同じクラスにいるから
あんまり変わらない感じ
それより試験がさー
目線が…少しずつ近づいていく…
ギンはどうやら人間よりずっと成長が遅いようで
こうか
そうそう それで私が走ったら離してね
No comments yet. Be the first to leave one.