The first 200 lines.
さあ 最後に もう一度 深呼吸しましょう。
静かに 目を開けてください。
大丈夫です。 そう。 あなたは 今日も大丈夫。
おはようございます。 おはようございます。
≪(女性たちの話し声)
おはようございます。
おはようございます。
大丈夫ですか? 春太さん。 えっ?
今 つらそうでしたよね? 社長に頼まれてるんで 私。
春太さんが働きやすい 環境づくりを。
あっ… はあ。 ねっ。 あっ コーヒー飲みます?
飲みますよね? あっ いえ…。
えっ? だって コーヒー 好きじゃないですか 春太さん。
ひょっとして 私 そういう➡
何でも頼めるフレンドリーな空気に なってないですか?➡
えっ? 何が足りないんだろう。
疎外感を与えてますか? 春太さんに。➡
やっぱり ここは 1人じゃ さみしいですよね。
ドア開けときましょう。 いえいえ いえいえ…。
ちょっと待ってください。
今 おいしいコーヒー 入れてきますからね。
癒やされてくださいね。
≪(涼)おはようございま~す。 ≪(加代子)おはよう。
あれ? フィルター もう これだけでしたっけ?
そうだっけ?
元気ないな~ 春太さん。 何かが違う。
え~ そうっすかね? 全然 普通に見えますけどね。
それは 君が 人を ちゃんと見詰めてないからよ。
すんません。
好きだね~ かわいそうな人のこと考えるのが。
だって 元気ないんですよ ここのところ。
元気だったことなんて あった?
確かに。 それも そうっすよね。
そういうことじゃないでしょ。
この間も 帰り道 公園で➡
何でだろう… 立ち止まって 何かをじ~っと 真剣な顔で見て➡
で 帰っていったんだけど また戻ってきて➡
何かを じ~っと…。 えっ? つけてんすか?➡
えっ? どっち どっち どっち? えっ…。
怪しいね。 過去は謎だしね。
ここに来るまで 何やってたか分かんないし➡
犯罪者かも。 えっ…。
また社長は すぐ拾ってくるからね 何でも。
拾うとか言うの やめてください。
とにかく守ってあげないと。
社長に頼まれてるからな 私。
あんた 職員室とか行くの 好きだったでしょ?
はい。 大好きでしたけど?
≪(ドアの開閉音)
春太さん はい どうぞ。
あっ どうも。
いいんですよ。 何か 嫌だなと思うことがあったら➡
何でも言ってくださいね。 ため込んじゃ駄目です。
分かりますか? 春太さん。 あっ もう ホントに 気に…。
人もね たとえ壊れてしまっても また再生すればいいんですよね。
ねっ 春太さん。 大丈夫ですよ。
はい。
壊れたら直せばいいか…。
何で 私が こんな目に…。
おっ。 遭わなきゃいけない…。 くそ親。
ハァ~ マジ ムカつく。 死ね。
よいしょ。➡
よいしょ…。 ハァ~。
よし。
すいません! ありがとうございました。
遅くなりました。 ごめんなさい。
あ~ 葉山さん あの 今日は ちょっと 着替えなくていいかな。
えっ? いいって 何でですか? いや… 何でだろうね。
えっ? えっ 首ですか?
いや…。 あっ!
もしかして 誰か 私のこと 何か言ってきました?
いや うちも客商売だからさ あの トラブルとかは ちょっ…。
あいつ…。 ねえ ちょっと聞いてる?
んっ? あっ! いた!
えっ? ちょっと 逃げんなよ!➡
チッ。➡
また逃げられた… も~!➡
あ~ もう! あ~ もう!
ちょちょちょっ… ちょっと 葉山さん ごみ 駄目!
何で 私が こんな目に…。 みんな 見てるから!➡
あの… ご苦労さまでした。 あっ いやいや…。
あっ。 あっ お疲れさまでした。
お疲れさまでした。
春太さん➡
分かってると思いますけども➡
私は いつでも 春太さんの味方ですからね。
はい。 ありがとうございます。
お疲れさまでした。
1人になりたい。➡
1人になりたい。
チッ。➡
んっ?
うわ! ひ~!
うわ~! うわ! うわ~!➡
あっ! まっ まっ…。➡
待て~!
あっ… えっと 参ったな。
これ しゃべるんですよね?
いや… ここ何年も 人と あんまり しゃべってないから➡
うまく しゃべれないかも。 ハハ…。
いや もともとはね➡
しゃべらないわけじゃ ないんですよ。
子供のころから➡
お前は 口から生まれてきたなんて 言われて。
口から生まれてくるわけないだろ。
こうやって… こう… こうやって生まれてきたのかよ。
コイか! 井の頭公園のコイか! みたいなね。
あっ すいません。
えっと…。
あっ… どうも。 小島 春太 40歳です。
あっ あれ… あれですよね?
まず 私が どういう人間か 話した方がいいんですよね?
えっ… バツイチ 独身です。
え~ 今は 家具店で働いてます。
あっ いや あの… もともとはね 私 サラリーマンだったんですよ。
一流とは言わないけど➡
二流ってこともないだろう みたいな。
資材を扱う会社で… まあ そこそこの会社で➡
そこの営業。
まあ 何ていうんすかね➡
自分で言うのも あれなんですけど➡
私 できる男だったんですよ。➡
営業成績も 常にトップ?➡
まあ 私に言わせてもらえば➡
私が できるってことも あるんですけど➡
正直 言って 何で 他のやつらには できないんだろうって➡
理解できなかったんです 私には。 分かります?
で ぶっちぎって 仕事してたわけですけど➡
何でですかね?
バカみたいな話➡
出るくいは打たれる っていうんですか?
私も 上司とか さらに上の 上層部とかの連中に➡
ばんばん 意見してたりしたもんだから➡
まっ 嫌われたんですかね。
もう めちゃくちゃ 仕事 押し付けられましてね。
できるやつ つぶして どうすんだって 話なんですけど。
とにかく あり得ない量の仕事と ノルマを 与えられました。➡
でもね それでも 私 頑張ったんですよ。➡
根性は あるんですよ 根性は。➡
あんなアホ上司たちに 負けてたまるかって。 でね…。
《広告宣伝に 力を入れています》
《起きろよ! 13%もアップ…》➡
《ぜひ うちの会社に来てください》➡
《ハクチョウを使用したCM…。 専務のような人になりたい》➡
《ネット動画広告を…。 分かります?》➡
《何で できないんだろう!》
ぷちんと切れた。
つぶれました。
《おいおい!》
ひどかったね あのときは。 会社でも 家でも。
あっ 家っていうのは あれです。
妻と2人 子供は なし。
ちょっと年上の いい嫁さんがいたんです。
ええ いた…。 離婚しました。
私のせいです。 100% 私のせい。
家でも荒れてましてねえ。
もう めちゃくちゃですわ。
何だか 世の中の人間に➡
腹が立って 腹が立って しかたがなかったんですよね。
特に 嫁にはね 俺が こんな思いしてんのに➡
お前 のうのうと何やってんだ みたいなね。➡
最低ですよ。➡
そんなこと ありもしないのに➡
妻に男がいるって 思い込みましてね。
で 離婚して…。
《小島さん!》 《ちょっと… 何やって…》
仕事も失いました。
ひどいですよねえ。
最悪です。
私は 彼女を 深く傷つけてしまった。
人生を狂わせてしまった。
不幸にしてしまった。
実家に帰ったらしいんですけど➡
その後 どうしてるかは 知りません。
知るの怖いですしね。
去っていくときの彼女は もう 心が壊れてしまったようで。
幸せになってくれてるといいけど。
あっ 私が言うことじゃないですよね。
でもね 私 愛してたんですよ 彼女のこと。
好きだった。
気も合ったし 一緒にいて楽しかったし➡
不幸にしようなんて 思ってもいなかった。
でも してしまった。
だからね 怖いんですよ 人と関わるのは。
また あのときみたいに おかしくなって➡
めちゃくちゃに してしまうんじゃないかって。➡
だから もう 人と関わるのは やめようと思ったんです。 はい。
あっ で… で その後 私が どうしたかというと➡
もう 何もかも失って 心も ぽきぽきに折れましてね。
いったい どこを どうさまよったのか➡
この町に たどりついてました。
公園で… まあ いわゆる ホームレスみたいなもんですか。➡
そこで 今 働いてるところの社長に➡
声を掛けられまして。
《何してんの?》
「何してんの?」って ホームレスに聞きます? 普通。
何もしてないに 決まってるじゃないですか。
変な人ですよね。
で 今の職場に 連れてこられまして。
「ここで働けばいいよ」って。
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