The first 200 lines.
あらゆる常識を打ち破ることによって
私は人生を築いてきた
子供の頃はマジシャンに
いつも種明かしをせがんだ
必ず目的を達した
“フォンテーヌ書店”
ドイツ フランクフルトブックフェア
「デダリュス」
では発表します
アングストローム出版は出版権を獲得
「デダリュス」三部作の完結編––
「死にたくなかった男」です
やりました!
12月に多言語の翻訳を同時に開始
3月には各国の書店の店頭に並びます
デンマ︱クコペンハ︱ゲン
〈家でできる仕事だから結婚したのに〉
〈子供が可哀想だ〉
〈状況が変わるわ〉
〈どうなる?〉
〈私を信じて〉
〈ジャマよ どいて!〉
ポルトガルリスボン
〈早く どいて〉
〈どうも〉
〈はい〉
〈これから仕事でフランスへ〉
〈2か月よ〉
〈まさか 冗談でしょ〉
〈何か問題が?〉
〈クビになった〉
〈フランスで働く?〉
〈専業じゃ食べていけない〉
“オスカル・ブラックとパリで会う”
“ダリオ・ファレッリ様”
何をする? 早く返せ
やめとけ 言ってもムダだ
私はケドリノス
携帯を取られた
契約書をよく読め
構わないさ もう1つある
フランスパリ 北駅
〝デダリュス〟
やあ どうも
フランスヴィレット邸
いい旅を?
名札をどうぞ
閉所恐怖症の発作でも名前を思い出せる
気をつけて扱ってくれ
いいさ 好きにしろ
すみません これは僕のだ
し… 仕事で必要なんだ自分の声を録音する
インターネットにはせ… 接続できない
ここにいた痕跡を残すことはできません
信用されてる
紙とペンで十分です
「デダリュス」の死んだ女のコスプレ?
自我同一性の拡散父子関係に問題
ご案内します
素敵でしょう?奥はもっと豪華です
アレックスだ
チェンだ
中国から来た?
20年 パリに住んでる
その若さで英語版に抜擢?
第1巻の翻訳にインターンとして参加を
他に希望者がいなくてツイてた
ベンチで寝た?
昨日 パリに着いた初めて来たから––
少しハメを外しすぎた
作品のファンであるロシアの富豪が––
世界の終末に備えて造った
彼の強迫観念のおかげで傑作を守れるわけです
どうぞ
大変ですが名誉ある仕事です
世界同時発売に向けた翻訳の共同作業は––
社長の天才的な発想であり宣言でもあります
“著作権侵害を防ぐために万全を期す”
販売部数の多い国から翻訳者が抜擢された
快適な隔離生活が送れます
皆さんの寝室は––
私のアパート全体と同じ広さ
バスルーム付きです
インターネットは使用禁止
毎朝 各国の新聞が届く
見るのに一生かかる映画コレクション
朝食は8時 昼食は1時夕食は9時
休日は日曜日仕事は朝9時から夜8時
社長は時間に厳しい
楽しい世界の終末を
あちらへ
〈翻訳のために生き埋め?まさに世界の終末だ〉
ちょっと失礼
エリック
イタリアのダリオ・ファレッリです
僕のことは?
全員を知ってる
座ってくれ
君もだ
20ページしかないわ
今日中に完璧な翻訳ができるとでも?
今夜 原稿を回収し明日 また渡す
次の20ページと一緒にね
第3巻480ページを1か月で翻訳する
次の1か月で確認と推敲すいこう
どんな図書館より多くの資料が揃ってます
ここが気に入らない?
1人で仕事したくてこの職業を選んだ
原稿とパソコンは持ち出し禁止だ
喫煙室は廊下の突き当たりに
ロシアの友人たちが監視を
では健闘を祈る 皆さん
フランス人いわく“奮い立て!”
2か月後
フランスボワ・ダルシ︱刑務所
面会を拒むかと思った
罪悪感の為せる業か
これを
出版される
﹁デダリュス﹂
話題になったからな
君に渡すために持ってきた
勝利の記念品ってところだ
私に届く原稿の中で出版する価値があるのは1%
売れるのは そのうち10%
ベストセラーになるのはたった2冊
私はアングストローム出版を長年かけて成功へ導いた
君が攻撃したのは––
数百万人が働き莫大な金を生む産業だ
逃げられないぞ
何度も読み返してるここに答えがあるはずだ
必ず突き止める
君がどんな手を使ったか
〝D・ファレッリ〟
オスカル・ブラックの原稿は︱
ずっと私の手元に
彼と私以外の人間の手に渡るはずがなかった
だが君は明らかにそれを手に入れた
いつだ?
そんな目をしても私は必ず突き止める
ハビエル
いや 結構だ
プレッシャーでつい飲みすぎそう
鈍感な奴もいるぞ
何だよ?
いびきとヨダレを
その若さで抜擢されるなんて才能があるのね
居眠りの才能はある
僕のやり方だ
遅れは取り戻すけど––
いつもは始める前にもっと時間をかける
まず最後まで読んで全体を理解したいわ
AIとは違う
いや 彼はただ––
用心深いだけだ
あいつの犬なの?
あのサド野郎
なぜレベッカが溺死したか知るのは つらい
どうして?
フランクは––
彼を過去から救うためにレベッカが自殺したと気づく
それは誤解を招く
フランクがデダリュスに支配され––
自分の妻を殺したとしたら?
レベッカがウイルスを作成
夫を実験台にしたら彼女が殺された
違う
それじゃ平凡だ
確かに
矛盾してる
答えが分かるまで2年も待った
実にむなしい2年間だ
もはや文学でなくただの流行り物だ
傑作は生まれない
〈何を言ってる?〉
売り上げ10億ドルの世界的ベストセラーだ
君の印税はいくらだ?
ゼロだ
彼も他の作家と同じように続編を書き続ける
スイスの別荘のローンを払い終わるまでね
ヨーロッパの大学では「デダリュス」の研究を
学生を集めて金儲けしたいだけだ
私もアテネで教えてる
そんなにイヤならなぜ来た?
君たちと同じだ
食っていくためなら金の前にひれ伏す
喜んで ひれ伏すさ
仕方ないよ
「デダリュス」を任されるのは翻訳者にとって誇りよ
レベッカ
フランクが作った亡霊
彼は区別できなくなった
レベッカははかない幻影となり…
〈破滅へ向かう時間に積み重なる罪悪感〉
〈消えゆく残像の断片が大きくなる〉
〈悲劇から生じて彼に取り憑ついた〉
〈レベッカ〉
〈セーヌ河に浮かぶ漆黒の長い髪〉
〈その巻き毛は船が通る度に煌きらめき––〉
〈そのドレスは白い翼のように波打つ〉
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