The first 200 lines.
(セミの鳴き声)
(久田(ひさだ))歩く
1歩ずつ前に進む
なじみの道を
まっすぐに
時には迷いながら
あの季節の中を
私は歩く
木漏れ日が降り注ぐ道を
1人で
そして2人で
忘れられない季節の中を
私は…
(市川(いちかわ))先生
(市川)久田先生
(市川)聞いてますか? (久田)すいません…
(市川)だから⸺
この子のダイエット動画が バズってて 本出すんですよ
初版で5万部
(久田)また ゴーストってことですか?
先生の文章 読みやすいんですよ サックサク読めて
それって 個性が ないってことですよね?
(市川)いやいやいや…
100万ちょい入る計算ですよ ねっ? どうですか? サクッと
あの… 新作を 書こうと思ってまして
フフフフッ…
また文学系でしょう? 売れないですって
(携帯電話のバイブレーター)
(タップする音)
もしもし
(弥生(やよい))あっ ごめん 今月分が まだ振り込まれてないんだけど
ああ… 本の打ち合わせで忙しくて 時間なかったんだ
日曜に渡すよ
(弥生)分かった
好香(よしか) 楽しみにしてるよ
“俺も”って伝えといて
(久田)ハァ…
(歓声)
(久田)ハハッ… 手ぇ広げてる (好香)フフッ…
(歓声)
(久田)イルカ見に行ったのに なんでクラゲ買ったの?
(好香)かわいいんだもん (久田)うん
イルカってさ 寝たら溺れるらしいよ
(好香)溺れるの? (久田)うん
(好香)ふ~ん…
(船の汽笛)
(久田)やっぱ 長崎の海のほうが きれいだな
(好香)また行きたいなぁ
(久田)うん 最後に行ったのは じいちゃんの葬式だったからな
(好香)うん
(足音)
(好香)ママ!
見て パパに買ってもらった
(弥生)良かったねえ (好香)うん
(弥生)よし 帰ろっか
(好香)パパ じゃあね (久田)おう またな
(弥生)なに? これ (好香)クラゲちゃん
(弥生)クラゲちゃん? ホントだ クラゲだ これ
(好香)足 ちっちゃい
(弥生)足 ちっちゃい 足ついてんだね かわいいじゃん
イルカは? 買わなかったの?
(久田)僕には⸺
サバの缶詰を見ると 思い出す少年がいる
きっと どれだけ歳を重ねても⸺
あの夏を忘れることはないだろう
(セミの鳴き声)
(少年時代の久田) “こんなボロボロな自転車⸺”
“絶対に直らんと思っていたが 父さんが触ると⸺”
“魔法のように 自転車が息を吹き返し 復活した”
“お父さんは 今日も朝から ランニングに⸺”
“パンツいっ… パンツ姿で お母さんに怒られている”
“でも 僕は そんな だらしないお父さんが大好きです”
(宮田(みやた))ハァ… 感動した
(宮田)久田 (久田)はい
感動した
なあ みんな! 感動したよな!?
なあ! 拍手!
(拍手)
(大人の久田)時代が 昭和(しょうわ)から平成(へいせい)に変わる少し前
僕が まだ小学生だったとき
(女子)荻野目(おぎのめ)ちゃん かわいかよね
(大人の久田)毎日⸺
友達と くだらないことで 笑っていた あのころ
(久田)俺ね 最近 キン肉(にく)マンのガチャ引いてんだけど
(久田)キン骨(こつ)マンが2回… (勝本(かつもと))ハハハッ! 2回?
(大人の久田)そこには 竹本(たけもと)という変わった少年がいた
(勝本)あいつ 見て
(入江(いりえ))服2つしか持ってないマン
(大人の久田)1年中 ランニング
消しゴムの代わりはツバ
いつも 机に魚の絵を描いていた
そんなある日 ちょっとした事件が起こった
(勝本)なあ あれ見て 今日は緑や
あいつ 2色しか持っとらん ハハハハッ!
(上杉(うえすぎ))ねえ 聞いて (勝本)なん?
(上杉)姉ちゃんが ピアノ欲しかって言いだして⸺
そいで買ったとよ
(上杉)ホント わがままか (勝本)すごかたい
おい タケ!
ワイん家(ち)にピアノ置いたら 床抜けるっちゃない? ハハハッ!
(竹本)バカが ピアノくらい置ける
(勝本)はぁ? ウソつけ (竹本)ウソつくか バカが
(勝本)じゃ みんなで 竹本ん家 見に行くばい
(久田・入江) 最初はグー ジャンケン ポン!
(入江)しゃーっ! (勝本)お~い
(勝本)早く持ってって 早く持ってって
(勝本)おい ちょっと待てって! (久田)えっ 待って!
(勝本)どんだけ歩かすっとや!
(大人の久田)よっぽど 家を見られたくなかったのか⸺
竹本は 僕たちをまこうとして 同じ道を3回通った
(勝本)ここ さっきも 歩いたろうが
(竹本)ついてこい (勝本)ふざけんなって
(千春(ちはる))兄ちゃん!
(勝本)きったねえ
(入江)ボッロボロやな! (勝本たちの笑い声)
(勝本)なあ あれ 目じゃね?
(入江)ホントや! (笑い声)
(入江)あれ 口じゃね? (笑い声)
(勝本)顔や 顔! キン肉マンの家や!
(笑い声)
(勝本)きったねえ! (入江)きったねえ!
(勝本)あれ 窓割れてんじゃね? (笑い声)
(入江)ボッロボロや! (勝本)ボロボロやな!
なあ このこと あした 学校のみんなに伝えん?
(入江)よかね! 全員 笑うばい
(女子)ヒサちゃん 行くよ
(勝本たちの笑い声)
(入江)ボッロボロやったな ハハハッ!
(勝本)あ~ 腹痛(いて)え!
(竹本)行くよ
(勝本)今年1年 いちばん笑ったわ
(入江)いや 5年や 5年! (笑い声)
(男子)ヒサちゃん おはよう! (久田)おはよう!
(久田)おはよう! (男子)おはよう!
(勝本)はい ちゅうも~く! (拍手と歓声)
(勝本)蹴ったらね 「ドリフ」んごと倒れるばい!
(児童たちの笑い声)
(大人の久田) みんながバカにする中 竹本は⸺
いつもどおり 机に魚を描いていた
その横顔は⸺
ジャッキー・チェンよりも タフに見えた
(セミの鳴き声)
(久田)ただいま (良子(よしこ))おかえり
あんた 手ば洗わんばよ!
(大人の久田)怒らせると 長崎イチ怖い母ちゃん
一度 父ちゃんの股間を 蹴り上げているのを見たことがある
(久田)何しよっとや? (圭太(けいた))宿題
(久田)バカだなぁ (良子)はい おかえり
(久田)丸(まる)ぼうろ!
(良子)もう… あんた 手 洗(あろ)うたと?
(久田)洗うた (良子)ウソばっかい言うな
(久田)洗うたて
(圭太)兄ちゃん ちゃんと 手ば洗わんと病気になるとよ
(久田)やかましか! (良子)何すっと
(圭太)何すっとか! バカ (良子)もう ほれ
ター坊 おやつば食べたら ラブナードで豆腐ば買(こ)うてきて
(久田)はぁ? 今 帰ったとに? (圭太)僕も行く
(良子)よかけん 行ってきてって (圭太)僕も行く!
(久田)あ~ やかましかて! (良子)たたくなって
これ! はい
(圭太)僕も行く! (久田)ヤバイ ヤバイ…
(圭太)待って! 僕も行く!
(久田)来た来た… (圭太)僕も行くーっ!
(久田)バッファローマン 頼む…
神さま お願いします バッファローマン…
お願い バッファローマン 来ててください…
(ため息)
また キン骨マン?
(豆腐屋のラッパ音)
(大人の久田) 肩もみを 30分10円という⸺
安いお金でやらせていた父ちゃん
(チャンネルを替える音)
斉藤由貴(さいとう ゆき)の大ファンだった
かわいかなぁ
はい 30分たった ハァ…
はぁ? ホントや?
ホントで 早(は)よう ちょうだい
んっ…
(広重)んっ… (久田)よし 毎度
(久田)父ちゃん (広重)何や?
100円 拾うたら どうする? 警察に届ける?
(広重)届けるか 落とすほうがバカぞ
(貯金箱に入れる音)
(セミの鳴き声)
(宮田)久田孝明(たかあき) (久田)はい!
(大人の久田)1学期 最後の日
楽しく夏休みを迎えるのか 地獄から始まるのか
全ては通知表しだい
(久田)フゥ…
フゥ…
(良子)何ね!? こいは
(広重)どがんしたとや?
(良子)きんたま かかんで (広重)かくやろ きんたまぐらい
(良子)きんたま 嗅がんで!
(広重)嗅ぐやろ きんたまぐらい!
(良子)よかけん こいば見て (広重)ああ?
おお… 国語は “よくできました”やないか
(良子)社会よ! ほれ
“頑張ろう” 算数も 理科も 音楽も!
(広重)よかたい! 国語の よかとやけん
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