The first 200 lines.
お母さん…
大丈夫よ アオイ
全て上手く行くから
お母さん ずっと外で待ってるから
お母さん
大丈夫よ
エノキダアオイさんです よろしくお願いします
あの時 最後に見た手術室の明かりを 私は忘れられない
海
激しい波が まるで
髪の毛のように絡まっていた水面
しかし その下の深淵は
寂寞(せきばく)の静けさだけが
もしかしたら 全てはあの光を見た あの瞬間から始まったのかも知れない
絶壁の上のトランペット
大丈夫?
うん 風が暖かくて 気持ちいい
私 もう大丈夫だから
アオイ手術も上手く行ったし
暫くここでゆっくりしてたら?
きっとまた元気になるわ そしたら 前から好きだった写真も沢山撮れるし
きっと コウイチとも 仲直り出来るはずよ
E...?
これからは あなたも 二十歳の女の子らしく
恋愛も 好きなことも 思う存分 楽しみながら生きていくの
普通の女の子みたいに
普通の女の子?
ん?
どうしたの?
あそこに
わぁ 本当 綺麗な夕日ね
そうじゃなくて・・・ あそこにトランペット演奏する
トランペット?
ホントだ トランペットの演奏音が よく似合う海と夕日だね
おはよう マリ
おはよう
おはよう
これからアオイお姉ちゃんのこと よろしくね
うん もし私一人だけでお姉ちゃんの事を 守れなくなった時はココに手紙を書くね
え?どういう事?
黄色い紙に 願いごとを書いて 青いポストの中に
入れると必ずその願いが 叶うんだ
願いを叶えてくれる手紙
最近マリが 願いを叶えてくれる手紙の話に 夢中なんだよ
Eu acho que é como o Papai Noel
サンタクロース...みたいな
お兄ちゃん アオイの事よろしくね
心配するな 俺はともかく マリがあれだけ喜んでいるんだから
きょうのよるごはんは、ハンバーグがたべたい。 パパがつくったハンバーグはおいしい。
日差しが綺麗だね マリ すごい
お姉ちゃん このお花キレイでしょ?
ホントだ 綺麗だね 写真撮ってあげようか
ちょっと待ってね いくよ ハイ チーズ!
お姉ちゃん もう一回撮って
あっ ゴメン じゃあもう一回いくね
いくよ 笑って ハイ チーズ!
かわいい
星が本当に綺麗だね
どうして同じ空なのに
東京とはどうして こんなにも違うんだろう
つらくなったら いつでも 帰って来いよ
この島でも アオイと二人で暮らすための 仕事くらいすぐ見つかるさ
お兄ちゃんは マリを連れて来たこと 後悔したこと無いの?
そうだな...
まぁ 最初の頃は色々悩んだり 後悔したりもしたけど 今は全く無い
まだ 実の母親のこと...
うん...
知らない
施設で逢った時 どうしても 置いてくることが出来なかったんだ
そうだったんだ...
うん
お兄ちゃん
ん?
アオイをここで預かってくれて ありがとう
何言ってんだよ
家族だろ?俺たちは
そうだね
やっぱり ふる里の味は いいだろう?
うん
美味しい
夏がはじまる頃 イルカの 悲しい歌が聞こえてくる
その歌が終わる頃になると
必ず梅雨も終わり 雨雲が消えた 澄んだ海の空の上で光る
眩しい太陽と共に 賑やかな夏祭りが始まる
お見送り出来なくて悪いな 今日は港で朝から用事があるんだ
大丈夫よ 元気でね
ああ
それじゃあな 気をつけろよ
うん
キライ
嫌い? じゃあ国語は?
好き
国語好き?何の物語今やってるの? 国語で今何習っているの?
風が気持ちいいね
何か かわいいの有りそうじゃない? 見てみる?
それは 売り物じゃないよ
どうして 売らないんですか?
これは 夏祭りの期間だけ 預かっている物なんだ
持ち主がある物を 売る訳にいかないだろう
ハンバーグ ハンバーグ ハンバーグ ハンバ~グ
さぁ...
お待たせしました はい どうぞ
おじさんのハンバーグ 本当に美味しそう
いっぱい作っておいたから ゆっくり 沢山食べてね
こちらの牛肉は 東京の物とはレベルが違うんだ
おじさんの料理の腕が 良いわけじゃなくて?
どうかな?
パパのハンバーグは 本当に最高!
パパのハンバーグ最高か? 良かった よかった
うん
あ そうだ!パパ もうすぐ夏祭りでしょう?
私 お姉ちゃんと一緒に 浴衣を着て行きたいんだけど
いい? うん
それもいいね 今年の夏祭りは アオイ姉ちゃんと一緒に行くか
いいね? アオイ
そうですね
お姉ちゃん お祭りの最後の日はね 絶壁の上に みんな集まって花火大会をするの
絶壁の上で 花火を?
うん その花火がね 本当にキレイなの
ふぅ~ん
マリ 今年は絶対 お姉ちゃんと見に行きたい
そうだね 一緒に行こう! うん -食べよう
あなたは イチロウさんのところの...
はい アオイと言います イチロウさんは私の伯父で
マリちゃんがいつも言っていた 東京に住んでいる お姫様みたいなお姉さんが あなただったんですね
お姫さま? 私が?
ところで お名前は?
僕の名前は ジオ GIと呼んでも良いです
ジオ?
はい
フリーマーケットに行って来たんですね? もうすぐ夏祭りが始まるから
はい
このトランペット 昨日同じ物を見かけたような…
それより ここからどうやって 帰るつもりですか?
え?
あぁ...
送りましょうか?
よかったら ちょっと 寄りたい所があるんですけれど
大丈夫ですか?
はい
ここが 僕の住んでいる場所
なんか...すごく大事にしている感じがします
この場所 よく見ると ひとつひとつ 凄く手が込んでいて
僕にはこの場所が 家族のように思えるんです
家族?
僕にとって 家族というのは... つらい時も寂しい時も―
いつも力になってくれる 友達のような存在で―
何でも話せて 何でも ??? たとえ喧嘩したとしても―
すぐに仲直り出来る それが 本当の家族だと思っています
それ
トランペット
小さいとき 海に魚を捕りに出掛けると たまにイルカ達に会ったんです
トランペットは 誰から?
父が―
最期に 海に出る前に 僕に残してくれました
十年前...親と一緒に韓国から お爺ちゃんがいたこの島に遊びに来た時
それで名前が ジオだったんだ…
ハイ
僕の母は 韓国人 父が この島の出身です
ところがその時 この島に何十年振りの 大きな台風がありました
でも 久しぶりに故郷に帰って来た父は 母を連れて海に出たみたいで
それから 僕は そのまま...
ごめんなさい 私が余計な事を聞いちゃって...
あ...あの時からです イルカ達に 会いたくなったら このトランペットを吹いたのは
不思議なことに この音色を聞くと 恐れずに近づいて来てくれて
イルカ達が?
多分 僕が寂しくないように 親から送ってくれたプレゼントじゃないかなと
それ以来 たまに彼らと一緒に 泳いだりしています
て ことは イルカ達と一緒に 泳げるっていう事ですか?
はい
イルカ達に会いたいですか?
じゃぁ もし良かったら 明日ココに来てくれたら
ホント?私 絶対に会いたいです
お姉ちゃん ―ん? 何かあったの?
うううん?何もないよ マグロ美味しいね ―うん
食べよう うん
明日イルカに会わせてくれると言う 彼の言葉は私だけの秘密
だから... マリにも話しをしなかった
子どもの時のように 何かにその秘密を残したかったのかな?
その時 マリの願いの手紙を 思い出した
ごめん マリ 一枚だけお借りします
黄色い紙に 願いごとを書いて 青いポストの中に―
入れると 必ずその願いが 叶うんだ...
こちらが ドナーの情報です
一年前から―
脳死状態で こちらの病院で 入院していた方です
ドナーの保護者の方が予め当人の意思を聞いており 変わりに承諾書にサインをしてくれました
そうなんですか
あの もし可能でしたら 保護者の方の連絡先を教えて頂けませんか?
申し訳ございません―
その気持ちは十分理解出来ますが 保護者の方に取っては―
一人しか居ないお孫さんの死を 再確認する事になるんです
夏祭りの最終日の夜 華麗な花火大会が終わり―
静かな時が来れば...この島の 全ての人々は 絶壁の上に立ち
心を一つに合わせて 遠い海の向こうへと耳を傾ける―
そうすると 海の向こう側から 今年最後の イルカの悲しい歌を 聞くことが出来る
大丈夫ですか?
うん...
大丈夫
本当に大丈夫?
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