The first 199 lines.
警視庁から各局 警視庁から各局。
千鳥署管内 あさみ桟橋。
子供用パーカおよび靴が 浮遊していると110番通報あり。
近い局 応答願います。
千鳥署1号 西矢口2丁目 警ら中。
黄色いパーカ? ホントか? それ。
うん 見つかったみたい。
⦅パパ~!⦆
柏崎君。
社長! サンダル!
えっ? あ~! あらヤダ。
こちらです。
結衣ちゃん。
今 奥様にも ご確認していただいたところです。
違う… 違います!
母さん。 だって名前が…。
話したろ! 遊園地で。
広が着ていた… 息子のパーカです。
今朝 大田区の河川敷で 発見されました。
現在 川底一帯を 懸命に捜索しているところです。
川底って… どういう意味よ!
何だと思ってんのよ!
まるで死んだみたいな言い方 するもんじゃないわよ!
母さん!
ねぇ! まるで 死んだみたいな言い方して!
母さん…。
<夢を見ました>
<あの子がいて➡
陽ちゃんがいて➡
お義母さんがいて>
<みんなで笑ってる>
<遠い まるでもう遠い夢のようで…>
<あの子が…>
<掛け替えのない いとしいあの子が…>
<息子が➡
いなくなりました>
柏崎 広です!
<広 元気ですか?>
<いつか あなたに会えたら…>
<もう一度 会えたら…>
<話したいことが いっぱい…➡
いっぱいあります>
<おとうさんと おかあさんが どんなふうに出会い➡
どんなふうに思い合ったか>
<例えば あの春の日々>
ありがとうございました。
シンギュラリティにおける 次世代の家族の在り方について➡
君はどう思いますか。
私ですか? 私は…。
タイトルです。
『シンギュラリティにおける 次世代の家族の在り方について➡
君はどう思いますか』という。
あ~ ご注文ですね! 申し訳ありません!
著者名は K・ジョーンズ博士 出版社は 日工出版。
K・ジョーンズ 日工出版… はい。
もう一度 タイトルを…。
『シンギュラリティにおける…』。
シ… シンゲラリティにおける…。
あっ すいません!
お願いします。
かしこまりました。 はい。
はい。
ありがとうございました。
フゥ~。
ハァ… フフっ。
あっ 名前!
ドア閉まります。
ありがとうございました。
あっ。
あっ あの!
あの…➡
シンギュラリティにおける 次世代の家族の在り方について…。
君はどう思いますか。 君はどう思いますか。
<話し掛けるのに 半年かかりました>
ありがとうございました!
<名前を知るのに さらに半年>
柏崎さん。
はい。
あっ… すいません。
あぁ 大丈夫です 大丈夫です。
<私達は ゆっくりと…➡
ゆっくりと その距離を縮めて行きました>
ほぉ~。
陽一さん どこ食べます?
うん? 何? ケーキ。
サンタさんの所? それとも…。
えっ 何?
うわ~! わっ!
あっ! あぁ!
ごめん… ごめん ごめん…。
いえ 大丈夫…。 あぁ…。
大丈夫です。
ハハハ…。 ハハっ フフフ…。
ごめん。
あっ…。
あ…。
顔 洗って来ます。
あっ…。
元気いいです 順調に成長してますから。
ご安心してください 元気ですよ~。
うん…。
まだね すっごく小っちゃいの。
それがね ちゃんと ドックンドックン動いてた。
フフっ。
陽ちゃん? 聞いてる?
妊娠12週目に 入ったところだって。
うん…。
陽ちゃん… 今日 会える?
待ってていい? うん…。
よいしょ…。
これ これがいいっていうからさ ねぇ 知ってる?
これ 穴が開いてて 新生児用のドーナツ枕っていうらしい。
こうやって寝るといいらしい ここに頭を乗せるといいらしい。
ほら こんな感じで いいらしい こうやって… ゴロンて。
ほら これ。 陽ちゃん。
頭が… えっ? 陽ちゃん 起きて。
はい。
子供できたこと…。 はい。
うれしいの?
えっ!? うれしくないの?
私は もちろん。 あっ 結衣… あっ。
僕は あの… 東欧大学の理工学部で➡
西原教授の下 人工知能の研究を…。
知ってます。 今はまだ 非常勤講師の安月給で➡
研究費をもらえるような 立場じゃないけど➡
学術書や専門書の類いは 申請すれば➡
大学が取り寄せてくれることに なってて。
つまり 君の働いてる書店に わざわざ出向いて➡
君に わざわざ 注文する必要はなくて…。
えっ?
君に… ただ 君に会いたくて。
えぇ!?
⦅柏崎さん⦆
⦅はい⦆
⦅では 入荷しましたら 連絡差し上げます⦆
⦅お願いします⦆
えぇ!? バスで 毎日 君を見掛けて…。
⦅あっ おばあちゃん どうぞ⦆
⦅どうも ありがとうございます⦆
⦅すいません⦆
えぇ~? ず~っと 君のことを…。
あっ 恐らく 君が僕に ひと目ぼれするよりも先に➡
僕のほうが ひと目ぼれといいますか…。
知らなかった…。
順番は逆になったけど…。
結婚しよう。
えっ…。
結婚してください。
ヤダ。
えぇ? 結婚しようよ。 嫌だ ヤダ。
一緒に暮らそう? ヤダ ヤダ。
陽一さん 彼女!
男の子? 女の子?
何言ってんだよ 母さん 気が早いって。
陽一さん 女に興味ないかと思ってました。
山乃結衣さん。 はじめまして。
ウフフ…!
バンザ~イ! バンザ~イ! バンザ~イ!
バンザ~イ!
むさ苦しいとこだけど 上がって ねっ。
<あなたを授かったこと➡
それは 大きな喜びでした>
<それまで見ていた景色が➡
どんどん広がって行きました>
西原教授の専門分野は 人工知能だけじゃなくって➡
ウェブマイニングや データ分析なんかも…。
ストップ! 堅っ苦しい話は よそう。
え~ 今日 こうして席を設けたのは➡
実を言うと 私からも報告が…。
あっ お待たせ~! リー坊 遅いよぉ。
だって ター坊 説明が下手なんだもん!
あらっ 道に迷っちゃった? 迷っちゃったよ~。
あぁ ごめん ごめん。 ごめんなさい。
はじめまして 莉沙子です。
えっと 柏崎陽一さんと…。
結衣です。 あぁ~ 結衣さん はじめまして。
便乗するわけじゃないけどね 実は こっちも。
エヘヘっ 女の子がいいかな? 男の子がいいかな?
俺に似てなきゃ どっちだっていいよ フフフ…。
教授? そう 結婚すんの。
できちゃった結婚。
おめでとうございます。 おめでとうございます。
うわぁ~! 莉沙子さん キレイ! ねぇ?
はい では こちらに。
どうぞ。
あぁ…。
具合 良くないんですか?
ううん 至って順調よ。
ちょっとね…。
私の同業者 ヘアメークのね。
「結婚おめでとう」 「妊娠おめでとう」。
「うらやましいです」 「結婚できなくてもいいから➡
子供だけは欲しいんです」 なんて言いながら➡
私の抜けた後の仕事の話とか➡
次の休みには どこに遊びに行くとか➡
何をするとか そういうことばっかりで。
フフっ やんなっちゃう。
何か この子ができてから➡
私の世界は どんどん狭くなってく…。
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