The first 193 lines.
(平良(ひら)一成(かずなり))“好きです”
簡単な言葉
けれど いつも 言葉は 喉に引っ掛かって
うまく出てこない
(平良)清居(きよい)
(平良)名前を呼ぶだけで 胸が張り裂けそうだった
(平良)名前を呼ぶだけで 胸が張り裂けそうだった
(清居 奏(そう))呼べたじゃん
(平良)うわぁ~! (城田(しろた))ううっ!
(平良)信仰にも似た この気持ち
この甘美な感情に とらわれたまま⸺
絶命したってかまわない
ただ 見つめてるだけでいい
甘くて酸っぱい金木犀(きんもくせい)のように
触れたら ハラハラと 崩れてしまいそうだったから
なのに… 人は欲深い
俺…
清居に触っていいかな?
今までと同じなら…
やだ
(平良)お許しください
勇気を言い訳に 神に触れる大罪を
いや…
許されなくてもかまわない
そのかわりに手に入れた…
俺だけの清居
奇跡だ…
(清居)また キモいこと言ってんな (平良)うお~!
えっ あっ おお… 起きてたの?
(清居)おはよう
(平良)あっ… っと…
おお… 怒ってる?
(清居)なんでだよ
(平良)えっ… その… 昨日
しし… しつこくしすぎたから…
(清居)チッ… (平良)あっ ごめん ごめん ごめん…
あの… き… 清居が あんまりかわいいから つい
それ以上 言ったら ほんとに怒るぞ
どど… どうしよう…
俺 死にたくなってきた
はあ?
清居が かわいすぎるから 死にたい
(清居)キモい! (平良)痛っ! あっ…
あっ ちょ ちょっと待って… 待って!
(平良)教えてほしい この矛盾する気持ちを
なんと呼べばいいんだろう
(平良)穏やかに月日は巡り 時間が過ぎていく
満ちては欠け 形を変えていく日常
だんだん迫ってくる 卒業の足音
(沢崎(さわざき))ん?
平良さん 月の写真なんて撮るんですね
(堀井(ほりい))おっ きれいな満月
あっ いや あの… せ… 正確には その…
(堀井)平良さんの写真って⸺
初期の野口(のぐち)大海(ひろみ)が撮る写真に 似てると思うんですよ
(沢崎)はあ? (堀井)えっ?
ハァ~… 俺のが 野口さんのことリスペクトしてるから
(堀井)また こいつ調子乗ってる (沢崎)乗ってない
平良さん こいつ 絶対 注意したほうがいいですよ
あっ…
(沢崎)あっ 部長!
(小山(こやま))お前ら 騒ぎすぎ 廊下まで聞こえてるから
(沢崎)平良さんが いじめるから (小山)はい はい
(堀井)お前…
(平良)4年生の秋
写真部を辞める 辞めないの攻防は 結構 長く続いていたけど
清居の後押しもあり 結局 残ることになった
(堀井)そんじゃあ 平良さん お疲れさまです
(沢崎)あっ お疲れさまです 小山さん お疲れさまです
お疲れ~
よいしょ… ああ~ 疲れた
インターン 大変?
うん 先輩たち見てたから 覚悟はしてたけど
大学生の最後って あっという間に過ぎていくんだね
あっ 平良も来週だっけ? 面接
あっ うん
どうなの? 清居君と
どうって…
清居君 忙しそうじゃない 会えてるの?
会えてるっていうか…
あっ!
ごめん 俺 もう行かないと
(平良)じゃあ また明日 (小山)うん
(山形(やまがた))こないだのドラマ 評判いいよ
(清居)ありがたいです 頂きます
フォロワーも増えたし
でも安奈(あんな)さんのバーターなんで なんとも…
(菅(すが))また そんなこと言って
あっ 頂きます
もっと上 行きたいんで 次に つながるように頑張ります
(山形)そのスーパークールが 清居君のいいところ
でも 実際に ファンは増えてるし 少しは喜んでいいと思うよ
(菅)うん 出待ちとか見てても ファンの層が厚くなってますよ
ほら 若い男の子いるじゃない あの…
不審君!
“不審君”?
(菅)背が高くて 目深な帽子 サングラス
360度どこから見ても 怪しさ満点の格好
まあ つまり 見たまんまのあだ名なの
なんで 夜でもサングラスなんだろ?
(菅)サングラス外したら ヒラメみたいな顔だとか?
(山形)フフッ (清居)誰が ヒラメだ
あっ えっと…
(山形)清居君のことじゃ… ないよ?
すいません 俺 これから 台本 読み込むんで…
頑張ります
(清居)お先に失礼します (菅)ああ…
ファンのこと悪く言われて 怒っちゃったんですかね?
意外
(ナレーター)受賞を機に 世界が ひっくり返ったように⸺
周囲のすべてが 変化したと語る安奈
(清居)止まれ (ナレーター)しかし⸺
天才という呼び名が 一人歩きするなかでも
彼女は 自分の等身大を見失わない
(安奈)清居 奏君 事務所の後輩です
いつも 安奈さんには お世話になってます
(安奈)フフッ そんなことないじゃん やめてよ
(清居)なってますよ
(リモコンの操作音)
(清居)止まれ (ナレーター)しかし 天才という…
ああ… 清居のいない世界で 生きていたくない
(清居)キモっ (平良)あっ おお… おかえり
誰がいないって?
ごめん あの~ 出迎えもしないで
(清居)出迎えは いいから せめて 普通に待ってろよ
(平良)だって…
また あのドラマの特集見てんのか
清居が オンエアより 長く映ってるから
(清居)出てきたと思ったら すぐに死ぬドラマな 俺が
ああ~! やめて やめて やめて!
し… 死ぬなんて そんな…
涙目になるぐらいなら 見んな
いや 分かってるけど でも す… すごくきれいなんだよ
だから それが ちょっと 複雑っていうか…
あっ あの… ごごご… ご飯 すす… すぐ
不審君…
(平良) あっ エビコロ もう出来るよ
俺 これ好き
母さんの得意料理だったんだ 小さい頃 よくお弁当に入ってた
(清居)へえ~
あっ ダメだよ 熱いから
揚げたてが 一番 うまいんだよ
(平良)あっ うん
はい
あっ…
箸
何 オドオドしてんだよ
いや だって… き… 清居が近いから
あっ
明日 出かけるぞ
えっ どこに?
うまっ
嫌なの?
(平良)あ… あの… 嫌じゃない!
清居が行くなら どこでも行く! 死んでも行く!
(清居)どれがいい?
あっ いや 清居は なんでも似合うよ どんな服でも
はあ? お前が着んだよ
えっ? えっ…
(清居)試着室あっちだから 行くぞ
あっ いや これ 袖ないけど…
お前の固定観念なんか捨てろ 早く
ええ~…
(清居)出来たの?
(平良)あっ えっ… あっ…
あっ!
(清居)いいな
(清居)かわいいじゃん これ (平良)宇宙?
(清居)はあ?
めちゃくちゃかわいいな この服
(平良)なるべく目立たないように せめて 汚くないように
そういうコンセプトで選ぶのが 洋服だと思ってた
なのに 今 キング… 高校生の頃から憧れて
尼僧のように思い続けた相手と こんな近くで…
お買い物を 俺はしている
(清居)いいじゃん
(平良)これを 幸せと言わずして なんと言う
だけど…
今日は こっちのほうがいい
(平良) 恐ろしさすら覚えてしまう
あの… 今日着たの 全部ください!
(女性)イケメンじゃない? (女性)えっ どっちタイプ?
(女性)茶色 茶色
(女性たち)キャ~!
(平良)人の幸せの量は あらかじめ決まっているという説がある
だとしたら 自分の人生はこの先 不幸しかないのかもしれない
清居に振られるとか 清居に嫌われるとか
清居に先立たれるとか
そうなったら どうしよう…
(清居)すいません コーヒー2つ ください
(店員)コーヒー 2つ 800円です (清居)はい 電子で
(店員)じゃあ そちらで (電子音)
(店員)はい ありがとうございます はい コーヒー 2つになります
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