The first 200 lines.
政府や企業の仕事は おいしい
完璧な人物調査書と 時間が与えられる
目立たず 任務を遂行させるためだ
地味に仕事を進めるほうが 安全で影響も少なくて済む
派手な仕事は求められていない
時間が問題となって 急ぐ必要がある場合も
訓練によって 呼吸のテンポを落として––
プレッシャーを抑えながら…
犯罪組織が好むのは派手な仕事
暗殺者の存在を知らせたがる
与えられる情報は せいぜい名前くらい
危険は増えるが報酬も高くなる
リスクが付き物だ
犯罪組織と仕事をすると 敵も生まれる
女が助けを呼ぶのは 現金を抜き取って––
下着をはいた後のはず
慌てるのは命取りだ
自分の緻密な計画を信じること
女が電話をするまで2分
さえない夜勤の担当者が
フロントで対応するまで 15~30秒
警備責任者に電話しても––
家で寝ているだろう
6秒おきに電話が鳴り
電話に出るのは恐らく4回目
18秒は稼げる
警察が出動するまで1分
ここには3分以内に着くはずだ
これがプロ
正確で 時機を逃さぬエキスパート
殺し屋だ
道具は新品同様に保つ
完璧な仕事のためだ
忍耐力あっての仕事だ
できるだけ人目を避け 存在を知られないようにする
影として生きる
正体は隠さねばならない
郵便公社は利用せず 民間私書箱で手紙を受け取る
名前も痕跡も残してはならない
匿名を保つため 仕事の受け方は複雑にする
依頼を受け損なうこともあるが それは この商売の経費
そのぶん報酬を高く設定する
これは暗号だ
やれ
プロトコル違反だ
今回だけだ
終わったら手順を戻す
時間がない
つまり?
たった48時間だ
計画を練れない
やむをえん
メリットは?
倍額だ
はっきりと言わせてもらおう
今回の報酬は––
厄介 やっかい な仕事だから高い
依頼主の要求は かなり特殊だ
分かった
よし
長い仲だから そう答えると思ってた
私のメンツを潰すなよ 終わったら電話をくれ
詳細は?
今日 確認すれば 散らばってる
“6時32分”にな
6… 3… 2
〝CEOの起訴 取り消し〟
事故を装って殺す
複雑な仕事でも かまわないが 計画を練る時間が必要だ
ニュースになっては困る
〝CEOの起訴 撤回 オハイオ州〟
秘密裏に行う
頭の中に計画が浮かぶ
〝迷子の犬を保護中 ご存じの方は連絡を〟
46メートル離れた場所から 時速100キロの車を狙う
撃てるのは1回だけ
タイヤがパンクすれば
ターゲットはハンドルを切り ビルに激突する
慌ただしい案件だ
もっと時間が欲しい
でも この計画で 何とかなるはずだ
ルールがある
焦らないこと
ためらわないこと
ねえ ママ
ママ こっちだよ
蹴って
集中すること
気をつけて
私が取りに行く
無心になること
危ない!
ママ!
ママ そんな
警戒するな
私1人だ
親父 おやじ さんは優れてた
どうだか
事実だ
お前も優秀な兵士で 勲章を授かった
軍人の家系だ
電話に出ないから ここだと思ってな
時間が要る
分かるよ
お前は よくやった
せかしたのは私だ
お前のせいじゃない
ああ
巻き添えなんて よくあることだ
分かるだろ
イラクでの誤爆事件とは 違うんだ
気にするなよ
別に…
お前は悪くない
ソンミ村の話は聞いたか?
いや 親父は何も話さなかった
そうだろうな
親父さんと出会った場所だ
私たちは若い新兵だった
ある夜 将校らが“明日は ベトコンどもと対面だ”と
“お前たちの友人や親族を 殺したヤツらだ”
“お前らの家族も狙われるぞ”
私たちは大麻を吸い 将校たちは酒を飲んだ
将校たちに言わせりゃ 翌日のためだ
心構えをしたわけだ
朝3時に起きて ヘリコプターに乗って出発した
殺すか殺されるか––
単純な話だ
到着して分かったよ
また情報が間違っていて 銃撃なんて起きてなかった
じいさんや女性 子供しか いなかった
たき火の周りで 朝食の準備をしてた
将校たちは老人と女性 子供を呼び寄せて
豚や犬 猫まで集めた
そして どぶに押し込んで
私や親父さんに撃てと命じた
命令どおり次々に撃った
私たちは自販機みたいに ひたすら発砲した
何も見えなかったよ
全員が撃つのをやめて ようやく死体と血が見えた
それだけでも最悪だが
その後 どぶの横で 昼飯を食べることになった
死体の山から 4メートルくらいの場所で
悪臭が漂っていた
急に音が聞こえた
犬か豚の鳴き声みたいだった
どぶを初めて のぞいてみた
そこに いたのは 豚なんかじゃない
はっきり分からんが 2歳くらいの男の子がいた
母親が自分を犠牲にして 守ったんだろう
幼い子で 状況を理解してなかった
分隊が集まり その子を見ていた
家族全員の死体の上を 小さな手足で はってた
私たちは誰も動かず その男の子を ただ見てた
その子に同情してた
ところが その子は どぶから出て逃げた
ジャングルへ
でも誰も動かなかった
すると––
上官が携帯食を平らげながら こっちに走ってきた
上官は私たちを見て 男の子にも気付いた
その子は 30メートル先を走ってた
上官は私と親父さんを見ながら “あのガキを撃て”と言った
“殺せ”と
私は親父さんと目が合った
親父さんの目を見て 彼には無理だと分かった
私は上官のほうを向いた
思いやりの か ・ け ・ ら ・ もない クズ野郎だ
上官は私に笑顔で言った
男の子を指しながら “さっさと撃てよ”と
“殺せ”とな
そうだった
そういう話だ
あの日 私は立派な兵士だった
親父は どうして 耐えられたんだ?
あんたも
私たちは兵士として 仕事をしただけだ
上官からの命令を受けて 従ったんだよ
後悔してるが やましさはない
本来の任務じゃなく 私たちに責任はない
そうさ
ただし…
私たち人間は誰だって––
ただの殺人兵器なんだよ
人を殺すように できてるわけだ
だから すべての軍事訓練や 教育の類いは
仕上げにすぎない
よく覚えとけ
本当だ
今日は いい天気だな
話は戻るが 25年後––
同じ分隊のヤツと再会した
すぐに悟ったよ
彼はソンミ村を忘れられず 心が死んでることを
彼が私に投げかけた言葉を 覚えてる
“あのジャングルに行くと”
“苦しむ声や おびえた悲鳴が聞こえそうだ”
“いつまでも”
そう言った
だが私と親父さんは 彼とは違った
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