The first 200 lines.
(雷鳴)
(雨の音)
(男性) 嵐は すぐそこまで来ていた
関東地方の南の海上に 居座った台風の影響で―
雨は激しさを増し…
平(たいら) 光(ひかる)が 鞠子(まりこ)の館に 着く頃には―
強い風も吹き始めていた
駐車場から 玄関に来るまでの間に―
平 光は 濡(ぬ)れ鼠(ねずみ)となり―
体からは次々と 雫(しずく)が床へ滴った
(雷鳴)
(男性)突然の落雷に 身をすくめた光は―
閃光(せんこう)に照らし出された この館の主(あるじ)の肖像に―
息を呑(の)んだ
絵の隅には 筆記体でサインがある
仄暗(ほのぐら)い玄関ホール正面に 掛けられた その絵は―
訪れた客人を見定めるような 冷たい眼差(まなざ)しを向けている
瞳が気になる光
(ドアが閉まる音)
(男性)音を立てて閉まる 扉を見やる光の背に―
声をかける者がいる
(ヒデ) よく描けてるだろう?
(男性)ヒデだ
光にタオルと シャツを差し出し…
(ヒデ)鞠子さんの特徴を よーく捉えてる
(平 光)ヒデ 久しぶり
(ヒデ)着替えは? 荷物の中も ひどそうだ
(光)大丈夫 みんなは?
(ヒデ)ああ あとは丸茂(まるも)だけ
みんなして集まるもんだから 客間は満杯だ
(光)フフッ 年イチの楽しみなんだよ
(ヒデ)沙耶加(さやか)なんて 昨日から来てるそうだ
(男性)ヒデの口から その名が呼ばれた瞬間―
光は 自身の鼓動が 早まるのを感じた
(光)元気そう? (ヒデ)ああ
(ヒデ)恭子(きょうこ)も文太(ぶんた)も 変わらない
(男性)沙耶加のことを 聞いたつもりだったが―
どうやら ヒデは みな と受け取ったらしい
(ヒデ)荷物 部屋に 運ぶかい?
(光)いや 先に 顔だけ出そうかな
(男性)1秒でも早く 光は 沙耶加に会いたかった
(ヒデ)駅から タクシーで5000円近くだろ?
だったら みんなで相乗り しようってことになってね
1000円ちょっとで済んだから 今年は得したよ
(男性) 玄関ホールを中心に―
客間が左右に 配された構造を持つ―
この館の左翼側にある 西階段を―
ヒデと昇りきった平 光
ふと 窓から見えた風景に 足を止めた
(ヒデ)光?
(光)なんでもない
(文太)よう 光!
(男性)お調子者の ムードメーカー 文太と―
神経質だが 仲間想いの恭子だ
(光)文太 恭子
(男性)一年振りの再会を 喜ぶふたりをよそに―
光は 想い人の姿を探した
どこか 儚(はかな)げで 憂いのある眼差(まなざ)し
光の心を掴(つか)んで離さない 沙耶加は―
ひとり 物思いに 耽(ふけ)っているように見えた
沙耶加
(恭子)やだ びしょぬれじゃない
(光)ああ ご覧のとおり
(恭子)台風 しばらく停滞するんだって
(文太)ほい~ 駆けつけ一杯 ダージリン
サンキュ
(男性)テーブルにはすでに―
四つの紅茶の カップが置かれていた
たまは?
(恭子)あれ?
(文太)さっきまで その辺 駆け回ってたけど
(男性)会話に参加して こない沙耶加がいじらしく―
光は 強引に たまの行方を尋ねた
(光)沙耶加は?
(沙耶加)えっ?
(光)たまだよ 知らない?
(沙耶加)さあ
(光)もう… つれないなあ
よっ
(男性)沙耶加の 些細(ささい)な行動ひとつに―
平 光の心は ざわついた
(光)着替えてくるかな
(雷鳴)
(男性)玄関ホールを 挟んで左右―
一階 二階は 客間が ずらり並んでいる
例年通り 館の右翼側一階―
東側の一番奥が光の部屋だ
(施錠音)
(光)幸いにも―
バッグの中まで 雨は浸透していなかった
慣れない山道のドライブが 祟(たた)ったか 私は―
柔らかいベッドに身を委ねた
(丸茂大介(だいすけ)) ここに来るまでは山道も多い
この雨だと そもそも危険だ
しかも 風も強くなってきた
白鬚橋(しらひげばし)って橋があるの 分かるか?
(ヒデ)少しは眠れたかい?
(男性)平 光が ラウンジへ戻ってくると―
溢(あふ)れ出る自信を 抑えきれない
仕切り屋の声が聞こえてきた
(丸茂)アクセル 踏み込んだね
(丸茂)そしたら… (恭子・文太)そしたら?
(丸茂)間一髪
俺のボルボが走りきった 途端に橋がドーン!
(文太)落ちたのか?
(男性)大袈裟(おおげさ)な身振り 鼻につく態度
丸茂は 光の天敵だった
(光)相っ変わらずだな
鞠子は?
(ヒデ)今日は ずっと部屋だな
このあとの準備に 張り切ってて
(光)みんな そろったって 伝えてくる
(ヒデ)あっ 悪いね
(男性)三階中央に位置する 鞠子の部屋まで―
平 光がやって来る
(ノック)
鞠子?
(男性)部屋には いるはず
そう思い 光はドアノブに手をかけた
平 光の目に 飛び込んできたのは―
うつ伏せに倒れている 鞠子の姿と―
床に広がる血溜(だ)まり
そして 鞠子の背中に 突き立てられたナイフだった
(光)うわあああっ!
(男性)ミステリーを愛し ミステリーにささげ―
ミステリーと生きる 全ての方へ
誰よりも早く 誰よりも正確に―
この謎を攻略するのは 果たして誰だ?
論理と ひらめきの先にある 頭脳と知性の闘技場
ようこそ 「ミステリーアリーナ」へ!
(モンテレオーネ怜華(れいか)) 今回のミステリーは―
人里離れた ふるーい洋館が舞台
この館のあるじ―
鈴木(すずき)鞠子の元に 集まったのは―
大学時代からの同級生
毎年恒例の同窓会の最中に 悲劇が
動機は不問
嵐によって生み出された―
クローズドサークルで 起こった―
殺人事件の犯人と トリックを―
解き明かしてもらいまーす
(歓声)
(樺山(かばやま)桃太郎)さあ 年に一度大みそかのお楽しみ
画面の前の そこのあなた
こよいも極上の謎解きを お届けしましょう
選ばれし 頭脳の猛者たちによる―
大金を懸けたクイズショーの 幕開けです!
(サンゴ)おいおい 早速 ビビってんじゃねえだろうな
(一子(いちこ))そんなことない
(一子)また…
あの目だ
(サンゴ) なんで わざと間違えた?
(サンゴ) お前なら もっと いけんだろ
(一子)だって… 出る杭(くい)は打たれるから
(サンゴ)で 出してた 課題は?
(一子)それなら…
もう 出来てる
(子供)ねえ
誰としゃべってるの?
(一子)無理だよ 絶対
(サンゴ)んなことねえ
私らなら 100パー優勝できる
100億だぞ 100億
その賞金がありゃ―
クッソみたいな生活から おさらばできるし―
この施設だって 存続できる
分かった サンゴの言うとおりにする
(サンゴ)ハハハハッ
おっしゃ~!
ヒッヒヒッ ハハハッ
(CMナレーション) わたくしたち―
クランバーチ グループは―
一期一会を大切に―
これまで多くの企業との パートナーシップ―
友好的な合併による 成長を―
繰り返してまいりました
我々の知見と テクノロジーは―
ひとえに 皆様の笑顔と―
幸せな未来のために
(ディレクター)樺山さん―
振り付け変わったとこ 確認よろしく
(スタッフ)番組開始時 リアルタイム視聴数―
2000万超えです
(重役)過去最高ですね
(ディレクター)よーし じゃあ 本番いくよ~
(スタッフたち)3! 2!
さあ 今年も始まりました 「ミステリーアリーナ」
出場者の名推理と共に 皆さんを熱くさせるのは―
そう―
なんといっても ばく大な賞金
誰よりも先に この―
“ミステリーバイブル”に つづられた謎を―
解き明かすことができれば…
100億円が 優勝者の手に!
(ジングル)
にしても 積もりに積もった キャリーオーバー100億円
番組をご覧の 貧・乏・人には 刺激が強すぎる額ですね
(樺山)ハハハ… (怜華)樺山さん
(樺山)そんな今回
記念すべき 第20回大会ということで―
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